○ 麦をまく

自然農の基本的な種の播き方には、バラ播き、スジ播き、点播きの3通りがあります。

バラ播きは、畝一面にバラ播く方法で、密植させてもよく育つ菜葉が主で、間引き菜が多く収穫できます。そのため、苗床を作って移植するレタスなどの野菜に適しています。

スジ播きは、約10cm幅のスジに種を播きます。スジ播きは、葉菜やニンジンや小麦といった比較的小さな種で、幼いうちに支えあいながら競い合い生長していく野菜に適しています。例えば、野沢菜・ホウレンソウ・二十日大根・種の小さなアブラナ科などがスジ播きに適しています。

点播きは、種の比較的大きなものや、豆類などのように地上部が大きく繁るものは、適当に間隔が保てるので適しています。例えば、キャベツ・ブロッコリー・大豆・大根などです。点播きの利点は、間引く手間が省けることです。種が少ないときや、なかなか畑にいけない場合には便利です。

播き方にそれぞれ特徴がありますので、それぞれ試してみて、自分にあった播き方を見つけてみるのも楽しみですね。

土地によって、風土にあったおすすめの麦がある。安曇野では、しらね(小麦)、しゅんらい(大麦)。近所の人に分けてもらうのが良い。

今回、小麦をスジ播きとバラ播きの2通りで播きました。

○すじ播き

@ 草を刈る。

麦を播くところに、まっすぐ紐を張る。その紐に沿って、鍬で草とともに表土をはぎとる。そうすると、鍬幅の種を播く部分が、スジ状にできる。はじめの丁寧にすることで育ち方が違ってきます。

 

A     麦をまく

指の間からこぼれるように播く。ほどよい間隔で。一度に播かず、往復して播くと均一に播ける。種まきを丁寧にすると、後々作業が楽になるだけでなく、収穫量にも差がでます。

B     鍬で軽く耕す。

軽く耕すことで覆土されます。

C     種を播いたすじを踏んでいく

覆土した土をしっかり下の土と密着させることで、乾きにくくなり、地中の水分が上がってきて発芽が揃うようになります。

D     鍬で草を刈りながら、すじ上に刈草を敷く。

いっそう乾きにくくなると同時に、鳥が種を見つけにくくなります。

E     敷草を踏む。

 

○ばら播き

小麦の種をいっぱい草の上からそのまま播きました。一度に播かず、往復して播くと均一に播きやすい。播いた後、草の上から踏んでいき、しっかり種を着地させます。草の中に麦の種があるので、鳥に見つかりにくい。種が土に着地して1週間で発芽する。翌年7月上旬から中旬にかけ収穫。

大麦の場合、翌年6月下旬に収穫。また、大麦の穂が出てきた時期が、夏野菜(トマト、キュウリなど)の定植時期。

 

さてさて次は、スタッフの方に切って頂いた支柱を使い、小麦を保護してあげましょう。
鳥はキラキラするものを見ると羽が引っかかると思い、近寄ってきません。
その特性を生かして、小麦を囲む様に支柱を立て、ナイロンの釣り糸を張りめぐらせます。まずは支柱の周りを、その後内側をジグザグに。ポイントはよく光らせる様にピンと張ることです。


これで来月か再来月に小麦の収穫ができるでしょう。
 

小麦刈り:

6月に鳥対策で糸を張った場所の小麦の穂を刈ります。乾燥した晴れの日の収穫がよいそうですが、梅雨のこの時期はタイミングがむずかしのですね。小麦は若いうちに(18歳)収穫します。雨の影響もあり、たおれている小麦もありました。穂が実の重みで垂れています。長い間の雨で芽がでている穂もちらほら。今回は、穂の部分だけを収穫。10本位の穂をつかんで、かまで刈ります。1本ずつ手で穂の先をとっていくのもいいです。これを乾燥させて、そのままひいたものが全粒粉、皮をとりのぞいてひいたものが小麦粉となります。皆で刈った穂は、新聞紙をひいた平らなかごへ入れ、ペンションの温室に入れて乾燥させます。8月にはうどんの予定です。うどんになった姿を想像すると、顔がゆるみます。楽しみですね。

石窯で焼く天然酵母パン・ピザ講座 体験記
                              宮本 秀二



 私は2年前にパーマカルチャー塾に参加し、3月から11月まで毎月1回1泊2日でシャロムヒュッテに通っていましたが、その時食べたピザやパンがとても美味しかったので、自分の家にも石窯を作りシャロムのような絶品ピザを焼いてみたいと思っていました。そのために、生地作りから焼き上げる迄を体験できるこの講座に今回参加させて頂きました。
 
『パン生地を捏ねる』
 今回の体験講座は、朝7時半にまずパン生地を捏ねるところから始まりました。
パンは干しぶどうから起こした酵母を使います。これはシャロムのレストランで、春から使い継いで来たものだそうです。先ず、元種に定量よりも少し少なめに(捏ねながら調節できるように)水を加え、手で大まかに溶かします。そして粉・塩を加え、粉が残らず全体がまとまるように良く混ぜます。まとまればボウルから出し、打ち粉をした台の上で右手で前方に少し押し伸ばすようにし、少しずつ回転させながら、全体を均一に10分ほど捏ねます。段々手に付いていた生地が付かなくなり、生地に艶が出てきます。端を持って広げて、指が透けて見えるくらい薄く伸ばせるようになれば捏ね上がりです。ここでは捏ね過ぎに注意します。捏ね過ぎると、又手に付くようになってしまいます。(私は捏ね過ぎてしまいました。そうなった場合は、手を濡らすなどして生地が付かないようにして、とにかく手早く丸めてしまいます。)
捏ね上がった生地は、表面に張りを持たせるように外側の生地を内に(下に)丸め込みながらまとめます。

『1次発酵』
 捏ね上がった生地を薄く油を塗ったボウルにいれ、乾燥しないようにラップなどで蓋をし、なるだけ暖かなところ(25℃〜32℃が理想。温度が低くても時間をかければ発酵するようですが、温度が高すぎると酵母が死んでしまうので、高温には要注意です。)で1時間半から2時間程度発酵させる。指を差してみて、跡が戻らなくなる程度になれば発酵終了です。

酵母の起こし方


『ガス抜き』
 手に少し粉を付け、生地の下に少しずつ手を入れていってボウルから出す。生地の両側4分の1をそれぞれ内側に折る。90度回転させて同じようにする。そして又、丸くまとめる。この時、粉が表面に付かないように注意します。粉が付いて表面が乾燥すると、発酵して膨らもうとするのを妨げることになるからだそうです。ですから、粉の付いている面は内側になるように下に下に(内に内に)と生地を丸めます。

『2次発酵』
 1次発酵と同様に、ボウルに入れ1時間半から2時間程度発酵させ、ここでも指を差した跡が戻らなくなる程度になれば発酵終了です。

『成型』
 今回は1個分の生地で行いましたが、2個分の生地で捏ねる場合(それぐらいの量の方が捏ね易いようです。)や、もっと小さくする時にはここで分割します。
 生地を4等分するように両側を内側に折る。90度回転させ同じように折り、もう一度3つ折にし、最後に合わせ目をつまんでしっかり閉じる。
 厚手の生地のマットでひだを作ったバットに、閉じ目を下にして並べ、マットを掛けてもう一度発酵させる。


『窯の準備』
 シャロムの石窯は、基礎の上に鉄板を渡し、その上に耐火煉瓦を並べて窯床を作り、かまぼこ型に耐火煉瓦を積んで窯を成型していますが、中間に1段鉄板を渡して窯を2段に分け、下で火を焚き上で焼くという様になっていました。(現在は下だけを使っています。)煙突や窯床の手前に空気の取入れ口兼灰の掃除口を設けるなど、凝った造りになっています。

 今回はピザとパンを焼くので、先ず高温でピザを焼き、その後少し温度を下げてパンを焼きました。窯の準備は、ピザを焼き始める2時間くらい前から始めます。まず薪を2本、間を空けて縦(前後)方向に置き、積み上げる薪に下から空気が良く通るようにします。そして、その間に着火材として木の枝を新聞紙で包んだものを置き、その上に下の薪と直交するように(横向きに)、薪と薪の隙間を空けながら2段目を積みます。これを交互に繰返します。そして新聞紙に火をつけて、薪に燃え移り全体が燃え出したら、下の薪を押して薪の山を奥に押し込みます。これはこの窯の内部が広いため、先ず奥を暖め、次に同じようにして手前側を暖め、そしておきを窯床全面に広げて全体を暖めるという順序で行うためです。どれだけ薪を燃やせば良いかの目安ですが、ここでは内部の温度は設置してある温度計で見ることも出来ますが、これは広い炉内の一部でしかないので参考とし、周りの煤で黒くなっているレンガが全体に白くなるのを目安としているとのことです。最初に置く薪は、押し込む時滑りやすく空気が良く通るようにと、なるだけ大きく真直ぐなものを選んでいま・u桙オた。又、着火材の枝は、燃え付き易くて薪に燃え移るまで十分に燃えるように、松の枝を使っているということでした。
 
ピザのための準備は、真っ赤に燃えているおきを全体に広げて、窯の温度を全体に十分に上げます。そして、ピザを焼く前におきを周りに寄せ、灰の掃除とピザの底が焦げないように窯床の温度を少し下げることを兼ねて、濡らしたモップで何度か拭きます。この時の温度の加減は、モップを入れたときの蒸気の勢いや、その時濡れた底のレンガが乾いていく早さなどで見るということですが、これはそれぞれの窯で経験するしかないようです。

今回はピザを焼いて昼食とし、その後でパンを焼きました。パンを焼く時には残っているおきは全て出し、窯床をモップで良く拭きます。ピザの時は数回でしたが、パンの時は10回以上は拭いたと思います。全ては窯の温度の様子との相談のようです。
このへんの温度管理は、それぞれの炉の癖があるので経験から学ぶしかないようです。

『ピザの生地』
 ピザは焼いて昼食にするので、パンと同時進行では間に合わないので、6時には捏ね上げて2次発酵までは済ませておいて下さったものを、最後に分割成形するところから行いました。ピザ生地は星野酵母を使っています。
計量分割した生地を、外側に張りを持たせるように内に(下に)丸め込みながらまとめます。これはあっという間の作業でした。手にくっつかないように粉を少し付けて、それを生地の表面には付けないよう気をつけながら手早くまとめます。ゆっくりやっていると生地が手に付くし、手に付かないように粉をたくさん手につけてやると、それを生地に付けてしまいます。

『ピザを焼く』
 焼く直前に生地を伸ばします。台の上で掌で押して少し伸ばしておいてから、周りのへりの部分は残して、指先で押して広げていきます。無理に外に広げるのではなく、厚い所を潰すような感じで押して、段々全体を丸く伸ばしていきます。そしてある程度薄くなったら両手の甲に載せ、位置を変えながら引っ張るようにして、更に延ばしながら形を整えます。薄くし過ぎて穴を開けないように注意します。穴が開くとソースがこぼれて焦げ付いてしまうので、開けてしまった場合は、つまんで塞ぐか二つ折りにしてフォッカッチャにするなどします。(これはこれでとても美味しかった。)
 そして好みのトッピングを行い、5分ほど窯で焼きます。均一に焼けるように、途中で位置や向きを変えます。生地を直接窯床に置いて焼くのですが、窯に入れるためのステンレスの団扇のようなものに載せるのが意外に難しく、私のは楕円形になってしまいました。左手で生地の手前を少し持ち上げて、右手(利き手)で団扇(のようなもの)をスッと下に差し込むだけですが、思い切りが悪いと引っ掛かってきれいに載りません。それでもシェフに直してもらい焼き上がったピザは、たまらなく良い色と香りを醸し出していました。

 



『今回のレシピ』
 パン(カンパーニュ)/ 1個分=約500g
   元種:            100g
   水:             150g
   シラネ(中力粉/長野の地粉): 125g
   ハルユタカ(強力粉):      60g
   全粒粉:            60g
   塩:               5g

 ピザ/ 1枚分=約170g
   元種(星野酵母):     (確か)6g?
   水:              60g
   シラネ(中力粉/長野の地粉):  60g
   ハルユタカ(強力粉):      20g
   全粒粉:                 20g
   塩:                    2g


『パンを焼く』
窯の準備が出来たところでパン生地を取り出し、鋭い刃物(カミソリ等)で縦に1本切り込みを入れる。これは、中の水分が蒸発し易くするためと、生地の膨らみを良くするためです。焼き上がってみて思ったのですが、深めにしっかりと入れたほうが良いようです。私は表面に傷を付けるくらいにしか入れなかったためか、出来上がりの膨らみ方が他の方より弱目でした。(これは捏ね過ぎも影響していたと思いますが。)
そして窯の中に蒸気を満たすために、ブリキの容器に小石を入れて熱しておき、焼く前にそれに水をたっぷりと入れます。(この理由は聞き忘れましたが、そのままだと中の水分がほど良く抜ける前に、外側は焦げてしまうからではないかと思いました。)そして十分に発酵した生地を並べ、7〜8分焼いてから一度全体が均一に焼けるように場所を移動させ、もう7〜8分待って焼き上がりです。
焼き上がって窯から出したばかりのパンは、叩くとコンコンと音がするくらい外側はしっかりと焼けていて、酵母と小麦の良い香りがします。かなりの部分は手助けして頂いて焼けたものですが、自分で捏ねたパンが焼き上がったときは、みんな思わず笑みがこぼれました。



 これまで土日にシャロムに来ていた時も、なんともゆったりとした時間が流れていましたが、休業日だったこの日はまるで時間が止まっているかのようでした。
前日から泊っていたので、朝の畑の見学から参加し、清々しい空気をたっぷりと吸って一日を始め、教えを請いながらピザを焼き、そのピザとシャロムの美味しい料理、そして皆の満足そうな笑顔と共に昼食を頂き、パンを焼いて持ち帰り、美味しいパンを食べながら土産話に花を咲かせる。とてもとても豊かでゆったりとした一日を過ごすことができました。こんな一日を演出して下さったシェフをはじめスタッフの方々、そして誰よりも臼井さんに感謝します。
ホームページでは見ていましたが、日々進化し変貌しつつあるシャロムヒュッテをこの目で見、体験して、改めて臼井さんの溢れるエネルギーと、何事も楽しんでやってらっしゃる姿に感服しました。これからも多くの方々に、本来の自分らしい生き方に思いを馳せるきっかけを与える場所であり続けてください。又お会いできる日を楽しみにしています。