第3期
安曇野パーマカルチャー塾
第5回「農」実践者に学ぶ自然農〜いのちのめぐり〜
1日目
<7月23日 天候 くもり> 記録者:村松康太郎
講師:臼井さん、梅さん、詩世さん、やっさん、
特別講師:三井和夫さん(結まーる自然農園)、& 奥様、娘さん
参加者:淳悦さん、しんさん、桃さん、ととこさん、ぷみんくん、おかくい姉さん、
みゆきちゃん、瑞希ちゃん、静ちゃん、こーたろー、さとこ、
見学参加:さはらさん(なつきーた経由シャロム行きの幼稚園の先生。地下足袋&道具持参!)
欠席者:なつきーた、すーさん、みほさん、ニーナ差代子さん、水ちゃん、朋ちゃん
(来月こそは会いましょ〜!)
▼1:30〜【集合】
今回、初めて関西チーム(ととこ、ぷみん、こーたろー&さとこ)が一台の車で集合するなど、いつものシャロムカーのお迎えが無くて済んだ。臼井さん曰く、「仲間での助け合いが進んでいる。これこそパーマカルチャー」とのこと。講座も5回目となり、みんなの仲間意識もかなり育ってきているのが感じられて嬉しかった (^-^)
▼1:40〜【観察実習】森林土壌の生物調査
◎
目的:土壌に住む生き物を調べ、土壌の状態を知る。
◎
道具:ひも、軍手、ポリ袋、ビニールシート(白い紙)、移植ごて、ふるい、飼育ケース、
ルーペ、顕微鏡
◎
やり方:㈰50cm四方を区切り、落ち葉をポリ袋に移す。㈪落ち葉をシートの上に広げな
がら大型の生き物を探す(見終わった落ち葉は後で戻せるように一塊にしておく)。
㈫地表から10cmほど土を堀り、ふるいにかけながら小さな生き物を探す。㈬生き
物が見つかったら調査票にある分類毎に記入。㈭分類毎の点数を合計して自分の
グループにおける調査結果を出す。㈮他グループの調査結果を足して、その土壌
全体における調査結果を出す。(詳細→「土壌の生き物調査」プリント参照)
◎
レポート:3つのグループに別れてシャロムの森の中へ入って行く。自分たちのグループ
は、開けた場所よりも木の下などの混み合った場所の方が、なんとなく生き物が
いそうな気がして、場所を選んだ。ひもを張って調査を開始しようとしたその時、
梅さんと詩世さんが私たちのグループに接近。梅さんがデジカメで撮った蝉の羽化
する瞬間の写真を見せてくれてかなり盛り上がる。現場でも蝉の抜け殻を発見たも
のの、残念ながらこれは点数にならないとのこと(I_I)。結局、落ち葉の中には期待
したみたいには生き物は発見出来ず・・・。盛り上がり過ぎで虫たちが逃げちゃっ
たのかも・・・。気を取り直して土を掘りにかかります。なかなか見つからない。
他のグループからは「お〜!」「やった〜!」などの歓声が聞こえてきて、内心、
少し焦ってきたその時、再び梅さん登場。小さな生き物を発見してくれました!
やっぱり、観察眼が違うんだな〜(・・・と、ちょっと尊敬)。コツがわかって来
ると自分たちでも見つけられるようになってきました。ただ、見つけられても、捕
まえようとすると小さすぎて潰してしまったり、ちぎってしまったりなど、悪戦苦
闘。もっと、大きなのはいないのか〜!?
時間が来るとそれぞれのグループが集まって、結果を集計。自分たちのグループ
で見つからなかった虫が他のグループで捕まえられていたりすると、みょ〜に悔し
かったりして、気持ちは完全に虫取りに夢中になってた子ども時代へ! 結局、僕
たちのグループは12点。全体の合計は44点となりました。この調査では、合計
点が100点に近い程、“自然度が高い”となるのだが、梅さんによると「経験的
には44点でも割と良い方」とのことでした。最後に、土のにおいを嗅いでから、
土や落ち葉をもとの通りに戻して終了〜。森の土はなんとなく、香ばしいような
匂いに感じました。
◎
感想: 小さい頃の虫取り気分で楽しかった。ただ、虫取りでは“大きな虫”ほどヒーロ
ーだが、森の土はむしろ目に見えないような小さな虫たちの営みによって豊なものに
なっているのかもしれない。その小さな虫たちをルーペで覗くと、それぞれに個性的
で、案外、“かわいい”奴らである事にも気づく。ウニョウニョとした“よくわから
ない”生き物たちを嬉々として手掴みする女性たちの姿も個人的には面白かった(^-^;
今回、落ち葉や土は一カ所にまとめておいて、すべてもとの状態に戻してから観察を
終えるようにしていた。パーマカルチャーではたとえ観察の段階であってもなるべく
“自然”にインパクトを与えないように配慮しているんだな〜_ψ(‥
)メモメモ
▼
2:30〜【建築実習】基礎作りの説明
*農業実習(各グループのは畑の手入れ)に入る前に、臼井さんを中心にアースオーブン建築
の基礎作りについて説明を受ける。
◎「パーマカルチャーでは観察に基づくゾーニング(どこにつくるのが合理的か)が非常に大
切になってくる」との梅さんの説明に続いて、施主である臼井さんから建築する場所の説明
と、「基礎はコンクリートによる“ベタ打ち”で行こうと思う」との説明。その後、場所の
観察と調査、基礎作りへと進んだ。
◎
傾斜の測定
水平器を使って傾斜を測定。建築予定地は高低差が約30cmであることがわかった。
◎
水遣り
㈰建築場所の外側の四隅に杭(水杭)を打つ(位置は“だいたい”で良い)。
㈪それぞれの杭の同じ高さに印を付ける。
(1)ホースの水の水位を利用
バケツなどのタンクからホースで水をひき、タンクの中の水位とホース先の
水位とが同じになる性質を利用して同じ高さを割り出す。水の水位から何cm
下にするかを決めて印をつける。
(2)rレベル測量器を利用
レベル測量では,単眼鏡をを水平に保って測点ごとに高さを確認するが測量器の調子が悪く、断念!
図らずも、機械に頼らない“生活の知恵”の偉大さが示された。
㈫水貫を取り付ける
㈬水糸を張る
(1)長い方の辺にそってまずは1本の水糸を張る。
(2)その水糸に垂直に交差するようにもう一本の水糸を張る。
*
垂直の出し方:3本の材に、尺棒を使って3:4:5の長さとなるように印をつける。それぞれの長さが3辺となる三角形を作るように材を打ち付けると、正確な直角三角形が完成する(中学で習ったよな〜)。
(3)基礎の寸法にそって各辺の長さを決め、(2)の方法を使って、残りの水糸を張る。
これで、基礎の形が空中に浮かんだようになり、後は水糸の交点から何cm下がりかで基礎
の位置が決まる(交点から錘のついた糸をぶら下げる)。本日はここまでとなった。
*建築実習の途中で、今回の特別講師の三井さんが登場。長い髪の毛とひげ、そしてとても
優しい澄んだ瞳が印象的な人だった
▼
3:30〜【農業実習】グループの畑の手入れ
みんなそれぞれが自分たちの畑へと向かう。そして、そこにはたわわに実を付けたお子(野菜)たちが!!!
1ヶ月ぶりだというのに、本当に健気でいい子たちだな〜。・゜゜・(>_<)・゜゜・。
私たちのグループ“守破離ふぁ〜む”では、夏の間に伸びた草を刈ってから、実った野菜たち
を収穫することにした。夏の間におかくいさんや、みずきちゃん、しずちゃんたちが来て、臼
井さんや詩世さんたちと草を刈ってくれていたので、思ったよりも茂っておらず、草刈りは比
較的すぐにできた。そしていよいよ、念願のしゅ〜かく(収穫)〜〜〜! 三井さんも早速、
一緒に私たちの畑に来てくれて、いろいろとアドバイスをしてくれた。
〜収穫出来たもの〜
■
ずっき〜に:めちゃデカい! 三井さんによると、「実の先に咲いた花が落ちた頃が収穫時」とのこと。根元にカマを入れて茎を傷つけないように気をつけながら収穫します。
■まる・ずっき〜に:これ、かなり可愛いぃ〜(*^o^*) なんか模様も入ってます! ズッキーニ
は違う品種同士でも受粉しやすいので、いろんな種類ができるんだそうです。
■きゅうり:これも、デカ! 放って置くと、きゅうりとかズッキーニとかって、めちゃくちゃ
大きくなるんですね〜。種を取る場合はそうしますが、食べる場合は適当な大きさのうちに穫
った方がやっぱり味が良いそう。
■トマト:しっかりした実がいくつかついてました〜。そのうちの1コはもう赤くなっていたの
で、これも収穫。ミニトマトも少し収穫しました。
■インゲン:臼井さんとやっさんが作ってくれた支柱に巻き付きながら、ずいぶんと伸びてまし
た。自分たちの身長よりも高いかも・・・。これもたくさんなってましたね〜。
あと、他のグループからはなすや、小さな人参なんかも収穫されていました。他に何か穫れて
たかな〜? 思ったよりもいろいろ出来ていたので、書き忘れたものもあるかも・・・。
◎
感想:先月からの間に何人かのメンバーが手入れをしていてくれていたとはいえ、「耕さず、
草や虫を敵としない」私たちの畑で、実際に野菜たちが自分たちの力(と土地の力)だ
けで実を付けている姿を見るのは本当に感動的です。そして、すごく愛おしい。何かを
自分たちが成し遂げたという達成感とはまた違った“よろこび”を感じました。「種の
状態や、土、気候などの諸々の条件が揃ったから実が出来る」といったような説明では
到底、納得出来ない、何か他に“特別な力”が働いているのを感じます。太古の昔から
収穫を“よろこぶ”お祭りがあるのも頷けます。「みんなで作れた」という“よろこび”、
「食べ物がある、生きて行ける」という“よろこび”、そしてそれは「風や大地、つま
り、神様から私たちが愛されている」という“よろこび”ではなかったか、そんな気が
してなりません。「私たちは祝福されている・・・」自然農は私たちの心を穏やかに、
そして幸せにする力を持っているようです。
▼
4:30〜【フリータイム】温泉!
ついに、念願だった温泉へみんなで行けました\(⌒▽⌒)/
場所はシャロムの近くにある「しゃくなげ荘」。露天はないけど、結構広くてゆっくりでき
ます。男湯ではそれぞれの仕事の話しや、「人生の流れや転機」についてみんなで話したり、
裸の付き合いが出来て、とてもいい時間が過ごせました。身体も休まったし、は〜〜〜〜〜、
りら〜っくす〜〜〜。 ・・・て、まだ宿題の発表とかあるのに、こんなんで大丈夫なのか!?
▼
6:30〜【晩ご飯】
三井さんと、奥様、娘さんを交えての夕食です。今夜のメニューはダルバート。ダルバート
は、ネパールの料理で、ダル(daal)とは豆のこと。豆を使ったスープ(日本で言うお味
噌汁みたいなもの)もダルと言うそう。バート(bhaat)はお米の事で、これらにトルカリ
(tarkaarli)という野菜のおかずや、アチャール(acaar)という漬け物などがついて、いわば
日本で言う定食みたいになっているのをダルバートというのだそうです。この日はパンつき。
〜食べ方〜
ダルバートは、というか、ネパールやインドなどではご飯は手で食べるんですね〜。使うの
は必ず右手。左手は不浄なものと考えられており、生活の中では用を足した後お尻を洗った
りするのに使います。だから、間違って使ったら、かな〜り大変・・・かも!
そして、ダル(豆スープ)をバート(ご飯)にかけ、ひたひたにして、そこにトルカリなど
を混ぜ込んで手でぐちゃぐちゃに混ぜながら食べます。初めての体験で、ちょっと気持ち悪
い気もするけど、なんだかワクワクします。そして食べてみると・・・ぅんまい!
味もいいけど、なんだか手で食べるとおいしく感じる! 舌や歯だけでなく、手でも味わえ
るなんて、なかなかいけてます d(>_<
)Good!!
「でも、ちょっと食べにくいかな・・・」な〜んて思っていると、三井さんが「人差し指、
中指、薬指の3本でスプーンみたいにしてすくって、口元まで持って行ったら親指をつかっ
て口の中に入れるといいよ」って、教えてくれました。な〜るほど、こうすればうまく口の
中に運ぶ事が出来ますね。なんでも、三井さんは昔、ネパールやインドを半年くらい(だっ
たかな?)かけて旅行されたそうです『自然農への道』を読むと、この時の体験が三井さ
んを農業へ進む決心をさせるきっかけにもなっているんですね)。実はじゅんえつさんもネ
パールを放浪されてるので、こちらのテーブルではネパール談義に花が咲きました。ちなみ
に、誰とは言えませんが、東京新宿のとある社長さんは、食べる前に「手で食べるの気色わ
りい〜」と言っておきながら、しっかりおかわりまでしていた事もここで報告しておきす!
・・・それほど、おいしかったって事ですね。
▼
8:00〜【宿題発表】おらが畑自慢
3期生のメンバーがそれぞれ自分で実践している“畑”を発表しあった。自分でが撮ってき
た畑の写真を、DVカメラとプロジェクターを使って地下室の壁に映しながら説明し、お互
いの畑を鑑賞した。
■
みずき・ふぁ〜む
お友達と一緒に市民農園を借り、勝手に名前を“みずき・ふぁ〜む”として、自然農を実践。とうもろこしとインゲンとをコンパニオン・プランツとして植える等、PCの成果も見られます。でも、他の市民農園をしている人からは「草を刈っておいてあげようか?」とか「肥料を分けてあげようか?」など、ありがた〜いお言葉をかけてもらう事もしばしばだそうです。「畑の近くに引っ越そっかな〜」など、気合いの入った発言もありました。
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むらまつ・ふぁ〜む
マンションの5階に暮らす村松家では、ベランダでプランター菜園をしています。ベランダ菜園では、家を空けた時の水やりを頼むためにも、お隣さんとの交流は欠かせません。写真を見られた三井さんからは「葉っぱの色もなかなかいい感じ」とのお言葉を頂きましたが、「草を敷いて土は裸にしないように」「なすの花が落ちるのは、おそらく受粉していないから」などのアドバイスを頂きました。続いて康太郎が勤務先の中学校で実践している畑を2カ所紹介。教育の場における“パーマカルチャー”的な考えの必要性を改めて確認できた気がしました。
■
おかくい・ふぁ〜む
がらっと雰囲気が変わって、「これぞ自然農!」って感じの写真が登場。シャロムの地下室くらいの広さだそうですが、5年くらいやっていると、周囲の木々も育って環境がずいぶんと変わったそうです。近くの牧草地から種が飛んできて牧草がたくさん生えるために、畑に敷く草には不自由しないそうですが、牛が迷い込んできて草を食べていた事も!三井さんは「標高が高いのに、よくがんばってるね〜」と感心されていました。
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しずえ・ふぁ〜む
土地付きの一軒家を借りて住んでるしずちゃんは、家の周囲のいたるところにいろんなものを植えていました。最初は土が酸性で石灰を蒔いたりもしたそうですが、バケツ田んぼやミニ・スパイラルガーデンまであって、本当に良い感じ。会社の同僚や上司が植えるのを手伝いにきてくれたりもするそうで、これも、しずちゃんの人柄のなせる技ですよね〜。ちなみに、写真に登場した飼い猫の“モンブラン”は一夜にしてみんなのアイドルとなったのでした
(^o^)
■
みゆき・ふぁ〜む
にがうりやしそ、なすやトマトなどが立派に育っている写真は、ほとんどがみゆきちゃんのお母様が育てられたお野菜たち! 「PC塾で畑の写真を撮る」と聞いたお母様がせっせとご自分の畑の写真を撮られたそうです。しかし、土の部分にはわらを敷く等の工夫も見られて、なかなかのもの。みゆきちゃんも少しは実践しているのですが、今後は「母から畑を奪い取る!」なんていう、真に“パーマカルチャー的”な発言まで飛び出して、いや〜、今後が楽しみです。みゆきちゃん、お母様と仲良くね!
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ももさん・ふぁ〜む
去年、信濃町に広大な土地を購入され、目下、開拓中! 桃さん自身は建築の方の準備に追われ、畑は主に奥様が週に1回、通いながら世話をされているそうです。広大な土地は農地もかなり広く取れるので、現在、開墾希望者を募集中(なんと無料!)だそうです。「将来は蕎麦も植えたい」とおっしゃる桃さん一家の壮大な夢は、この広大な土地とともに今、まさに始まろうとしています。
■
じゅんえつ(と、ばあちゃんの)・ふぁ〜む
おかくい・ふぁ〜むに続いて、「これぞ、自然農!」って感じです。ありとあらゆるお野菜が所狭しと植えられています。その姿は、植えた本人が「どこに、何が植わってんのかな〜」と困ってしまう程。まさに“雑草”と一体化した畑なのです。その中には、「アピオス」や「ドシコ」といった、聞き慣れないものまでありました。また、PCの知恵を生かして、トウモロコシとカボチャとインゲンをコンパニオン・プランツとして植えたところ、インゲンの成長が早くて、モロコシに巻き付けない事態となってしまい、「ばあちゃんに怒られた」なんていう微笑ましいエピソードも披露されました。じゅんえつさんは今後、「穫れた野菜をレストランに出して、生ゴミを堆肥として畑に循環させる」という野望も持っているそうです。
今後が楽しみ!
■
みついさん・ふぁ〜む
→ 「農業講義」の方に回します。
■
梅さん・ふぁ〜む
棚田になった田んぼは代掻きをした水田です。もぐらが穴をあけて水が漏れる事もしばしばだそうです。畑は傾斜した斜面で、谷が深くて日当たりは「一日の半分くらい」だそうです。でも、そこに育つなすやトマトの葉っぱはキレイな緑色をしていて、三井さんの「やっぱり、暖かいといいな〜」なんていう呟きも聞こえました。ご存知の通り、梅さんは各種の講義やコーディネートで忙しく全国を飛び回ってますが、その間も代わりの人が畑の手入れをしてくれるわけではなく、「彼らが勝手に育っている」とのこと。う〜む、これぞ、まさしく自然農(?)。次回は是非、蜂の写真も見せて下さいね。
◎
感想:「発表は一人3分」という事前の梅さんの説明でしたが、いざ、始まってみると時間
が押すわ押すわ・・・(^_^;) 姿形はそれぞれですが、みんな自分の畑を愛してるんだ
な〜って感じがすごく伝わってきました。専用の農地から果ては勤務先の学校の裏庭ま
で、みんなが「出来る事から」「出来る形」でパーマカルチャー的な暮らしの“初めの
第一歩”を踏み出していると言えるのかも知れません。「牛が入ってきた」「コンパニオ
ンにならなかった」「実がつかずに花が落ちた」などなど、数々の失敗を重ねながらこ
れからも進んで行くのでしょう。もう、後戻りは出来ません。
なぜなら・・・めちゃ楽しいから!
▼
9:30〜【農業講義】自然農のVTRとお話/ゲスト:三井さん
□三井和夫(みつい かずお)
1951年生まれ 1979年に実家(山梨県長坂)に戻り、農業を継ぐ。
当初、リンゴや桃などの果樹専業農家を目指すが、農薬散布の危険性を知り、農薬、化学肥料を使用しない農業を試行する。有機農業を実践して
いくうちに、耕すことに疑問をもつ。1988年、川口由一さんの著作に出合い、自然農を知る。
自己流に実践して中途半端な状態で行き詰まっていた時、穂高養生園での川口さんの実習を体験する。目から鱗が落ちました。
その後、長坂で4年にわたって指導を受ける。トラクターを手離し、耕すことをやめて、安心の内に農の実践ができる事が夢のよう。水田2反。畑1haで栽培する。
◎
三井さんの畑 山梨県北社市「結まーる自然農園」
「おらが畑自慢」の中でも三井さんの畑の紹介があったが、その後のTV番組でも紹介され
ていたので、合わせてレポートする。
八ヶ岳の南麗、標高650〜700mに三井さんの畑はある。夏の日中はかなり温度は上が
るものの、冬はかなり厳しいところだそうです。「自然農で生計を立てている数少ないプロの
自然農の実践家」というだけあって、様々な作物が植えられていました。特に、一時期は果樹
農家を目指していたこともあるとのことで、桃やあんず、さくらんぼといった果物の木が植わ
っているのが印象的でした。今はあまり手入れはしないそうですが、それでも枯れずに生きて
いるのを見て、三井さんは「木の生命力はすごい」とおっしゃっていました。畑は、番組の中
で、レポーターがどこに野菜が植わっているのかわからずに、野菜を踏んでしまうというシー
ンがありましたが、やはり、自然農らしく、かなりの草たちに囲まれて野菜たちが育っていま
す。一般の畑のように、キレイに草が刈られ、規則正しく整えられた「きれいな」景色ではな
いかも知れませんが、しかしそれは決して“荒れた”風景ではなく、むしろ生命感にあふれた、
実に美しい景色でした。
◎
三井さんの家
三井さんは自分の家を3年がかりで自分で建てたそうです。番組の中ではレポーターが「ス
テキなログ・ハウスですよね〜」とコメントしたときに、すかさず奥様が「ただの掘建て小屋
です!」と突っ込んでいたのが、すごく面白かったのですが、それを優しい眼差しで見つめる
だけで何も言い返さない三井さんがまたステキでした。
もう一つ、畑の小高いところに「松ぼっくりハウス」と言うのがありました。ちょっと詳し
い説明を聞きそびれたのですが、もともとそこにあった木をそのまま利用して小さな小屋を作
られたようです。今後はそこに手を入れる予定もあるそうで、今後が楽しみです。
◎
三井さんと自然農
三井さんと自然農との出会いについては、詳しくは『自然農への道』の中に書かれていますので、ここでは三井さんを囲んでの懇親会の中での印象に残ったことだけ紹介します。三井さんはあまりその気は無かったそうですが、結果的には家業を継いで、農家となられました。最初は苦労したものの、有機農法で徐々に生活も安定して行ったそうです。しかし、三井さんは様々な理由から有機農法にも疑問を感じ始め、自然農へと移行して行かれます。その理由についての質問に対して三井さんは「いろんなものを作りたかったから」と答えられました。私は一瞬、「え〜、なんて単純な! そんなことで?」と感じてしまいました。なぜなら、自然農への転換は同時に大変な収入減を意味するからです。実際、奥様からも大反対にあわれたそうですが、後に奥様はTV番組のなかでこう言っておられます。「だって、言いだしたら聞かない人だから」。半分、あきれながら、そして時には三井さんにするどい突っ込みを入れながら、それでも奥様は一緒に生きて行く道を選ばれているようです。三井さんのあの澄んだ瞳を見れば、そうせざるを得なくなる奥様の気持ちも、なんだかわかるような気がしました。
◎
出会い
やはり、“縁”というものがあるのでしょう。有機農法からの脱却を目指していた三井さんは最初、福岡正信さんに学びますが、あまりにも卓越した観察眼や植物への理解を目の当たりにして「僕には出来ない」と思われたそうです。そんな時に川口由一さんの『妙恵なる畑に立ちて』に出会い、「これなら自分にも出来るかもしれない」と思われたそうです。覚悟やその思いの深さは違うかも知れませんが、パーマカルチャー塾での実践を通して、私たちもなんとなく「これなら、できてしまうかも」という印象を抱くのと少しは似た経験かも知れません。そして、なんと三井さんと川口さんとの出会いは、あの山尾三省さんを介してと言うのだから、それこそ“縁”としか言いようが無い話しですよね。その瞬間、みんなやっさん(山尾三省さんの大ファンだそうです)に注目してしまいましたが、あまりのショックのためか、コメントはありませんでした。
◎
夢
将来の夢について質問されて、三井さんは「身体の事、医学に興味がある」とおっしゃっていました。自然農では、使う道具はほとんどノコギリガマ一つ。機械はまず使う事が無いので、あとは自分の身体だけが頼りと言う事になります。そのために自然と自分の身体と向き合う事が多くなるのかも知れません。一つの作業をするにも最も効率的な身体の使い方を研究し、疲れない動き、疲れない身体を追求するなかで、「身体・医学」への興味へと繋がっておられるようでした。「自然の状態になるべく近づける」ことを目標とする自然農の知恵と思想は私たちの身体についても示唆深いものだと思われます。そう言った意味でも、三井さんの興味が繋がって行くのは、もしかしたら必然なのかも知れません。
◎
感想
三井さんが自然農へと進んで行かれた道のりは、悩みながら、試行錯誤しながらのグニャグニャ道にも見えましたが、それでいて一点の曇りも無い、どこまでも澄んだ“必然”の道のようにも感じられました。どこまでも素朴で、威張ったところが全然無く、私たちの無理なリクエストに応えて本当に恐縮されながらも一生懸命、本にサインをしてくれた三井さん。その姿は畑の草を刈る時にも少しも変わりませんでした。そう、三井さんは草を刈る時でさえ、優しい表情をしています。最小限の草だけを刈り、その草をその場所に、そのまま、そっと置きます。
「自分自身に正直な人なのだ」
私は三井さんにそんな印象を抱かずにはいられませんでした。
正直に家業を継ぐのを嫌がり、山登りに没頭していた三井さん。時が来て、正直に家業を継いでしまったら、農薬の影響を自分の身体で知ってしまう。有機農法でさえ、機械から吐き出される排気ガスや、大量のミミズの死骸に気がついてしまう。気がついてしまったからには後戻りは出来ません。「自分のこころや体が一番傷つかない、穏やかでいられる暮らしとは」という問いの中で、三井さんは自然農へと行き着いたのではないのでしょうか。「自分のこころや体が一番傷つかない、穏やかでいられる暮らし」とは、他でもない、「他者を傷つけない、穏やかでいさせる」暮らしではなかったのでしょうか。
私たちも段々、後戻りが出来ない気持ちになってきているのを感じます。
「すべての人々の偉大な成功を祈っている。
それよりほかに、もはや取り得る道はないのだから」
(ビル・モリソン 『パーマカルチャー』日本語版への序文より
7月29日の畑の様子です。
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