安曇野パーマカルチャー塾第5回 写真をクリックすると大きな写真になります。 2003年度 安曇野パーマカルチャー塾 第5回 1日目 7月26日(土) パーマカルチャーのデザインをするにあたって何よりも重要なのが自然の観察。 という訳で今回は自然をどう読み取っていくかの講義になりました。 ― 自然をただ漠然と眺めるのではなく、そこに何があるのかしっかり見て読み解く事が大事。(自然現象の裏にあるものを読み取る。それぞれの関係性を発見する)― に基づいて(1)道具(2)自然の読み方(3)読む対象 の3つの観点からの説明。 (1)
自然を読むには道具が必要である ★その道具とはまず、研ぎ澄まされた感性 現代人は自然から離れた生活をしているので、感性が鈍くなっている。 まず「ここに命がある」という事を受け止め感じるコト。他人から説明してもらっ たり、本で読んだ知識に頼るのではなく一人一人が自分で感じられる様になる事が 大切。 ― それを邪魔する一番の問題点は先入観なので、まず常識を捨ててみるという作業から始める。(捨てるためにはしっかり見る) ― また自然と時間を同調させ乍ら、細やかな感性を働かせないと自然は見えて来ない。(自然の時間と現代人のそれとは差がある。自然には常に動いているという特徴があり、ゆっくり且つ速く流れているので、時間を飛び飛びに使っている人間とは異なっているからだ。自然は細やかだけれど、現代人は粗い。私達は小さな動きをある程度まとまったものとして見てしまいがちだが、その過程に何があったかに目をむける必要がある。) 「三井さんや中河原さんと我々とではきっとみえているものが違うのだろう」という設楽さんの言葉。同感です。 ― 自然の中でうまくいっているものを、自らの場に持って来てどの様に応用出来るかを考える。例として白樺。「白樺はどうして白いか」(えっ?そんなの考えたコトなかった。)「自然には意味のない事はない!!」(えっ!そうなの?)→白樺は涼しい気候を好む→白は光を反射する為、樹木自身が暑くなり難い→白樺が発見した自分なりの方法を、熱を貯めたくない所を白く塗る等、自分の場で応用していく。類推力を働かせる。(1+1=2でなく1+1=3にする為にはどうすれば良いかを考える。−自然界では良くあること) ★そして、科学 感性をもって得たものを、理由づけして(自分のフィールドで確かめて)人に伝 える。(仮説をたて、実践し、一般化されたものが科学) ★更に、伝統文化 自然の読み方の入り口として使う。 伝統文化が持っている『自然との付き合い方』を学ぶ。 何所に行けばその地域の伝統文化を知ることができるのか。 ― 役場(町史)・祭り・鎮守の森(その土地の自然が多く残っている) 老人から訊く 等。― ※ 《推薦図書》 風土産業 三澤勝衛 著 古今書院 出版 (土地の自然を生かした産業について書かれている) 虚心坦懐に偏見を持たずに見る。(自分にとって不快なものでも否定的に見ない) 例)・湿っている場所→その土地を使って何ができるのか
・斜面→多様性をどの様に生かしていくか 【自 然】 @存在:人間が変化させ難いもの、又は変化に長い時間がかかるもの <地 勢>高
度
差―
うまく高度差を使うことで多様な植物を育てることが可能。逆転層(谷の上部と下部の冷気の間にできる比較的暖かい層で家屋や菜園に適している)の利用も考える。 <大容量の水>近くに大容量の水(海・湖・池)があると温度調節の役割を果たし気候の緩和をしてくれる。 <緯 度>日射時間に関係してくる。→植物の発芽は日射時間に関っているものが多い。 A現象:変化するもの <気
象>降
水―
年平均よりも月毎の降水量を知る必要があり、大洪水は
何時起こったかも頭に入れておく必要がある。また、結露による水の供給があるかどうかを知ることも必要。森の中では 降水量+露によって水が供給されている。(微風状態が最も結露し易く、霜の発生とも関係している) 風 ―
斜面を上がる時に増大し、下がる時に減少する性質を持つ。台風が来ることを想定した場合、防風林は家の下方に作ったほうが良い。 <太
陽
光>エネルギーの自給を考える時に必要になる。 50%が地上に。その内94%が熱に変換されるか、植物の生長に利用される。 ※植物が光合成により変換することのできる太陽エ ネルギーはC4植物(サトウキビ等)で4% 畑の野菜はだいたい1%程度 <植
相>植物の作用の1つ蒸散作用について 植物に太陽光があたることによって葉の中の水蒸気が蒸散する。この過程でエネルギーが消費され、まわりの空気が冷える。
熱の対流について 日中、太陽の光が樹木に吸収され、空気が暖められ上昇していく。それにつれて、周りの冷たい空気は森の中に引き込まれる。夜になると、反対の空気の流れがおきるが、日中蓄えられた暖かい空気は木に遮ぎられ出て行かない。この為、森の中は日中涼しく夜暖かい。 <動
物
相>そこに生息する野生動物を排除するのではなく、どの場所に生息し ているのか、主に昼間活動するのか夜行性なのかを見極め、時間・ 空間による棲み分けを考える。 B要素(素材) < 石 >色々な種類がありそれぞれの特徴がある。 < 土 >プリント参照
<植 物> 〃 <動 物> 〃 【文 化】 <地 名>古くからの地名はその土地の特徴を表わしていることが多い。 <道 具>鍬の長さは土地によって違う→どの位深く掘れば栄養分のある所に届くか土地によって異なるので
<技 術>東洋においては自然が圧倒的ではなかったので、利用する技術が発達した。 <慣 習>山の雪の残る所が『種まき爺さん』の形になったら種をまけ等 ※次回は今回配られたチェックリストを使ってシャロム周辺のデザインをする予定 予定ではここでお楽しみの農業実習になるところだが、明日午前中の棟上げに間に合わす為、即、材の刻みに入る。 指示を待つまでもなく皆、マイ鑿・マイ金槌を手にもくもくと自分の材に向かう。 かく言う私も、もう「大工仕事は苦手」などと言ってはいられない。とにかく今日中に自分の刻みを終えなければ。担当している部材は垂木を乗せる傾斜部分が入った桁材。角度をつけて削っていかなくてはならない。垂木の幅に鋸を入れて、その間の部分を鑿で削り始める。ナント、これが面白い。「はまって」しまった。 周囲では着々と仕事が進んでいる様子。 今回特別参加の強力な助っ人高橋姉弟は、お休みの人の材を担当してテキパキと作業を進めている。 みちるお姉ちゃん。タオルを粋に頭に巻き、切れ長の目でエモノ(材木)を見つめる姿は美しい。 弟洋平君。作業がひときわ遅れているのを見て取ったのか、すかさず私の援護に回る。「鑿を使うのは初めて」と言い乍らその手際はなかなかのもの。見る間に穴が穿たれてゆく。頼もしいぞ!青少年。 ここにきてぽつぽつと間違いが発覚してくるが、あわてない、あわてない。設楽さん、余川現場監督が頭を寄せ合い、すぐに変更の指示がとぶ。ミスした方の部材に合わせて関係する材の刻み寸法を変えていくのだ。 「あっ!失敗した」の声があがる。「大丈夫だよ!」と声が返る。 皆、回を追うごとにより大胆に、臨機応変になってゆく。その変貌振りに目を瞠っているのは私だけではあるまい。天闘武士魂ならぬ“臼井健二魂”が乗り移ったかの様である。 あっという間の夕暮れ。照明が入り「終わらない人は蛍見学はなし」という臼井さんのハッパに益々気合いが入る。自分の刻みが終わった人は自然にまだの人の手伝いに。かく言う私も何人もの人に手伝って頂きました。ありがとう。ありがとう。 8割がた作業が終わり、明日の見込みがついて安心したのか余川現場監督がブランコに乗るなどして余裕を見せ始めた頃、「夕食ですよ」の声。 明日の建前にまくお餅も 森の子の敬子さんから届けられました。 ありがとうございました。 これら1つ1つのものがどう組み合わされるのか、まだまだ思い描けません。 ○
観察実習 「ナイトハイク・夜の森に出かけよう」 ナイトハイク。 それは怪しげな集団のフォックス・ウォークから始まった。 フォックス・ウォークとはネイティブアメリカンの人達が、狩を行う時の歩き方で、まず足の小指の付け根部分をそっと地面に付け、障害物がない事を確かめてから体重をかけていく。歩幅は膝にソフトボールを挟んだまま前に進める位の小さなもの。地面をより感じる為に軍足に履き替え、森に向かってにわか仕込みのフォックス・ウォーク隊が行く。眠っている虫や野鳥達を起こさぬように、そおっと、そおっと。時折ポキリポキリと足元で小枝の折れる音。空気は湿っていて暖かい。昼間の講義を思い出す。 森の中で梅ちゃんを中心に車座になる。 まず目をつぶって、あたりの音に耳を澄ませる。虫の声、蚊の羽音、遠くの方でバイクのうなる音。視覚を遮断することによって次第に心が落ち着いてくる。他の感覚が鋭敏になる。 次に片目を塞いでもうひとつの目で懐中電灯の明かりをじっと見つめる。数分後閉じていた目を開けてみると・・・なんと赤外線カメラで見た様な光景が目の前に現れた。 「皆の中に眠っていた野生が目を覚ましたのです。森の動物たちにはこんな風に周りが見えているんじゃないでしょうか」と梅ちゃんの説明がある。 その後、各自シートを持って思い思いの場所へと移動。そこで寝転んだり座ったりして夜の森を目一杯感じ取ろうという訳だ。20分の予定だったが蚊の襲撃のために途中で予定変更。今度は歩き廻る事にする。 再び集合の合図。それぞれに感じたことを伝え合う。踏みしめた落ち葉の感触を楽しんだ人。森の匂いを強く感じた人。自分の中の野生が目覚めていく様で興奮した人。寝転んで見上げた枝や葉の形が昼間とはまるで違って見え感動したと言う人もいた。 私は正直少し怖かった。この暗がりの中、太古の人達の夜の暮らしに思いを馳せた。
人工の灯りがなかった頃、月のあかりは今の何倍も意味を持っていただろう。 湿ってやさしい森の匂いがほんの一瞬、時の境目をなくしてくれた。 夜の森は、昼間とはまた違った顔を私達に見せてくれました。 ○
シャロムタイム 「蛍を見に行こう」 ナイトハイクが終わるや否や車に分乗していざ、蛍見物へ。 ポツポツと小さな光が点る田んぼの道を通って護岸工事の施されていない川に行き着く。そこはもう、蛍の里。それぞれにこの光景を楽しんだ。 人が大勢居て賑やかなのに、不思議としっとりとした空気が流れている。なんだか人が蛍に同調しているみたいだ。蛍の命を皆で見守っている様な気分になって来る。 蛍は初めてという人が何人かいたけれど、こんなすごいのを見ることが出来て良かったね。十分に満喫した後三々五々シャロムに帰る。今日も目一杯、充実した一日でした。 闇夜に幻想的な光を灯す懸命なホタルたちの姿は、感動を与えてくれます。 毎回楽しいイベントを用意してくださっている臼井さん達に感謝しつつ・・・おやすみなさい。 レポート 宮本 理子
第5回 2日目 − 7月27日(日) レポート □
AM6:00〜 農業実習(農場の整備、堆肥作り、人参・白菜の種蒔き、そして楽しい収穫) 1日目は畑に出なかったので、半分近くの人は既に自分の担当の畑の手入れを始めている。 “うーん、やるなあ”と思いつつ、寝ぼけまなこ組も合流し、先ずは自分の畑の手入れに掛かる。これだけは誰に言われなくても全員作業を始める。そして、誰かが必死に止めない限り延々と作業は続く……。“何事もこれくらい没頭しなきゃねえ、皆さん。”などと人事のように考えてしまう。 さて、畑の様子はというと、勤勉早起き組みの畑も、寝ぼけまなこ組の畑も等しく草に 覆われている。1ヶ月も放っておくとなると、少々手入れを良くしても草の勢いの前には 無力ということか。私の畑も緑のマスとしては見事で、植物の勢い、自然の力に感嘆したものの、草を刈ってみると、肝心の野菜たちは草の勢いに圧倒されてしまっていて、肩身を狭くしてヒョロリと育っている。とう立ちして種取用に置いておいた大根は、カメムシの巣と化して殆ど種は残っていない有様。‘あれほど“大きく育てよ!”って言って聞かせたのに。’ などと思ってみてもしょうがない。1ヶ月もの間放って置いたのだから。何事も思いやりが大事です。肥(こえ)=養分が十分な畑でも、声=愛情が足りないと野菜は余り良く育たないようです。“野菜作りは‘肥’と‘声’。”これを十回唱えてから畑に出るようにしましょう。 今日のテーマの[堆肥作り]に移ります。今回は、畑のすぐ脇に木で組んだ立派な堆肥場が あるのでそれを利用して行う。ここでは既に下には堆肥となった植物たちが入っていますが、 新たに作る場合には土の上に直接置いてゆきます。少し前に刈っていた草やわらを積み、良 く踏む。―ここで“重い人踏んでください。”と声が掛かるが、周りで見ている女性たち、普段は何でもやってみようと積極的だが誰も反応しない。確かにちょっと出にくい。― そして水を掛け、豚糞を置く。畑の土も入れる。これを繰り返し、最後にシートやむしろで 覆う。(今回は蓋があるので蓋をするだけ) ●堆肥の作り方 @ 土の上に直接少し粗い材料を置く。 A
わらや草などを積む。(50p程度) B
水を掛ける。(下にしみ出る位。しかし多過ぎると発酵しない。わら等は前日に水を含ませておく方がよい。) C
踏み固める。(10cm程度になる位) D
牛糞・豚糞などを置く。(土を加える) E
これを繰り返し、最後にむしろやゴザなどで覆う。(微生物は紫外線に弱いので 直射日光に当てないようにする為と乾燥防止の為。) ※
炭素の多い材料/落葉、おがくず、籾がら、わら等と、 窒素の多い材料/草、生ごみ、米ぬか、鶏糞・牛糞・豚糞等を、 10〜20:1の割合で交互に積む。 ※
畑の土を少し加える。(その土地の菌を入れる。重石の役目。) ※
少なくとも1㎥を目安として作る。(少な過ぎると発酵しない。) ※
生ごみだけで作ろうとすると嫌気性発酵で腐ってしまう。 ●堆肥の利用の仕方 ○
畝間に入れる。 ○
元肥として苗を植えるときに一緒に入れてあげる。(ナス等の肥料を多く必要とするものには特に良い。) ○
夏野菜の苗作りの際の踏込み温床とする。 −設楽語録:・ 草の中に必要な栄養素(窒素、燐酸、カリ)は有る。だから、川の土手 では草は次の年にもちゃんと生えてくる。草が自ら堆肥を作っている。化成肥料は人間が後から真似て作っているもの。 ・ 野菜の収穫は朝が良い。栄養分を一番溜め込んでいる時だから。草刈りも草が軟らかいので朝が良い。 −臼井語録:・ 刈った草はそのまま野菜たちの間に伏せておくように。そうすればそのまま堆肥になります。 つづいて人参の種蒔きです。西側の少し草の生えている所で行いました。 何時もの様にまず草を刈り、種を蒔く所だけ表土を鍬で削り取ります。土が硬いときは表面の5〜10oほど耕す。 そして均して鍬の背で押え、平らな蒔き床を作る。種を蒔き、押える。 詩世さんが丁寧にやって見せて下さる。人参への愛情が感じられ、何時もながら感心します。
“自然農は最初が肝心。”これを良く覚えておきましょう。 突然詩世さんが“人参ダンス”と叫び踊り始めました。こうして良く踏むといいそうです。やりますねえ詩世さん。畑の作業もこれぐらい楽しくやらなくては。 ●
人参の種蒔き ―→ 表土を削り取る。(草や草の種を取り除く。なるだけ薄く。) ←― 少し耕す。(土が硬い場合。5〜10o程度) ―→ 表面を鍬で均す。 ←― 鍬の背で押えて平らにする。(ここ迄の作業で、草や草の種のない平らな蒔き床を作る。) ―→ 種を蒔く。(掌を上に向け指の間から落とすようにして均一に蒔く。発芽率 が悪いのでかなりたくさん蒔き、後で間引く。) ←― 鎌の背で叩くように押える。(秋の葉物は大体この方法で良い。ほうれん草は 厚く土を掛ける。) ―→ 鍬の背で押える。 〜〜 人参ダンス。(能のような摺足やタップダンスのように蹴るのでは無く、華麗にステップを踏むのが宜しいようです。踏めば踏むほど良い。人目など気にせず、一汗流すくらいの気持ちで。) ―― 細かな草を掛ける。(乾燥防止。人参の芽は針のように真直ぐに出て来るので、 草の間から芽が顔を出せるように細かなものを掛ける。) ○ 梅雨明け直前に蒔くのが良い。人参は最初に水分が無いとヒゲ根がたくさん 出て硬くなる。
○ 蒔く場所は、水分が多い所が良い。 ○ 人参は発芽率が悪い(50%程度)のでたくさん蒔く。 人参、春菊は発芽すれば半分成功。 ○ 種蒔きの際、周りの草は余り刈り過ぎない方が良い。草を全て刈って種を蒔くと、住処を無くしたコオロギ等に芽が出たらすぐ食べられてしまう。 西潟さんがやってみる。後ろに下がりながら鍬で表面を削ってゆくが、少し曲がってしまう。 ここですかさず設楽さん、“性格が出るよなー。” でもさすが西潟さん、そんな外野の声には 動じず、‘確かに少し曲がっていますね。’という風情で、直して種を蒔く。お見事。 続いて白菜の種蒔きです。詩世さんの指導の後、皆で蒔いてみました。 ● 白菜の種蒔き ―― 平らな蒔き床を作るところまでは人参と同じ。 ―― 種を蒔く。(丸く点蒔き。今回は10粒蒔きました。空き缶やお碗の様なもので筋をつけると蒔きやすいようです。これを40p間隔で行う。) ―― 薄く土を掛ける。 ○ 穂高町近辺では7月25日〜8月5日頃が蒔き時だそうです。 ○ 白菜は発芽率は良い。ほぼ全て芽が出る。 その後皆で曼荼羅ガーデンの草刈りと、インゲン、トウモロコシの収穫を行いました。 もちきび畑では草との見分けが難しく、詩世さんから見分け方を教わったものの、時々“あ!” などと声を上げつつ無心に草を刈る面々。もちきびが草に負けてないので、周りだけで良しとなる。草は刈ってしまわなければいけないと思い込んでいた私などには、この事は本当に福音 でした。でも隣の小豆畑では“邪魔になっているものを選んで刈って下さい。”と言われ、さてどれが邪魔になっていて、どれがそのままにしておいても大丈夫な草か?と考える。明らかな丈の違いがある場合はそれで判断してしまいそうだけど、‘「自然農−川口由一の世界」の本の中で、川口さんは冬の草がまだ元気な初夏の田圃に稲の苗を植えていたなあ。’と思い出す。 これから勢い良く育ってゆくものと、役目を終えて間もなく枯れ行くものとを見極められれば余分な草刈りはしなくて済む。すると昨日の講義の“自然を読む”が必要になってくる。虚心坦懐に自然を見れば、きっと必要な事は全て自然が教えてくれるんですね。草刈り一つ取っても実に奥が深いですね、‘自然農’は。 インゲンとトウモロコシを収穫する。“ご飯だよ。行くよー。”の声にも夢中で収穫を続ける。なかなか離れられない。何時もながら収穫は楽しい。 草刈りの終った各自の畑を見てみると、草だらけの時には分らなかったけれども、野菜たちの育ち方には明らかに違いが有りました。やはり、心を込めて丁寧にやれば自ずと結果は付いて来るようです。昨日の講義によると、ここでこの1ヵ月の変化の経過に思いを馳せ、何故そうなったのかを考える事でまた1つ学ぶ事が出来るのではないでしょうか。疑問も解決策も全ては畑に有るようです。 畑に教えられたところで、おいしい朝食へ。 □
AM8:00〜 朝食(お昼ご飯かと思ったら、まだ朝食なんですね。) □
AM9:00〜 建築実習 T ― 部材の刻みの仕上げ〜一気に上棟へ 昨日かなり進めていたので、もう終って他の人の手伝いが出来る人や、目処が立って余裕の人、私のように間違いが発覚し修正したらまた違っていて、満身創痍の部材を抱えた人など悲喜こもごもの面々。何も分らなかった人達が、何時しか黙々と作業を進められるようになっています。皆いつの間に覚えたのかと感心しました。 作業が進み、部材同士、枘と枘穴を合わせてみると色々と食違いが出てくる。担当者、設楽さん、監理者余川さんらで、“まずいなそれは”などと言っていても、施主兼現場監督(の様に作業内容に精通している)臼井さんの“いい!それで行く。”の一声で決まり。とにかく昨日「森の子」の方に、明日は昼前に上棟式を行いますと言ってあるので、何としてもそこにもって行かなくてはならない。棟上げへと向けてことは一気に進んでゆく。 部材の刻みが終ったところで仮組みしてみる。やはり途中で何箇所か変更しているので、合わないところが有る。枘と枘穴の大きさや深さが合っていない箇所を微調整する。私の担当の柱は小屋側の枘の向きが違っていたので、30×60を30×30と小さくし、枘穴の向きも違っていて、これは直行方向にも穴を開けて凌いでいたので、何とか形は留めているものの最早構造材の体はなしていませんでした。掛け矢で叩き込むところまでは何とか持ちこたえていましたが、もう一方の柱の側の枘が合わなくてばらすのには耐えられず、枘が取れてしまいました。これは一大事で、本来ならば作り直さなければならない処ですが、なにせ上棟させなければいけないので、木工用ボンドで接着するという荒業を使い乗り切ってしまう。(何事も無く屋根が乗っているだけなら良いのですが、風で屋根を吹き上げられたり、地震とかの水平方向の力が加わればひとたまりも無いと思いますから、次回金物で補強しましょう。) そしていよいよ建て方です。仮組みした部材を運び基礎の上に組上げる。仮組みした面と面の間の梁や足堅めは、両側から掛け矢で叩き組み込む。程なく組上がり、水平垂直の精度を確認する。曲尺(さしがね)を当てて掛け矢で叩き調整する。鉛直方向は下げ振りなどを使うと良い。調整したところで仮筋違いで固める。そして垂木を渡して仮止めし、目出度く上棟。これを目指してはいたのですが、実際出来てみると良く此処まで来れたなと思いました。皆さんご苦労様でした。 そして上棟式。御祓いをし、立派に祝詞も唱える。そして森の子の人たちが搗いて下さった御餅の餅撒きで歓声を上げる。物は小さいのですが、皆の努力の結晶の上棟を祝うのに相応しい、暖かく楽しい上棟式でした。
敬子さんからのメール 夏休みに入って1週間が過ぎました。今日は、パーマカルチャー塾の人達が、森の子の子ども達のために作ってくれているコンポストトイレの建前の日でした。 昨日から、今日の午前中までに、間に合うようにと夜まで作業をしていました。 夏休みということで、森の子の子ども達全員は集まることができませんでしたが、建前の儀式が行われました。 塾の方が、祝詞を上げ、みんなで祈り、餅まきが始まりました。Mちゃん達がまかれるお餅を拾いました。 私は、屋根の上にのせてもらい、お餅をまきました。お手伝いが何もできなかったのに、お餅をまかせてもらい、とても恐縮しましたが、皆さんの気持ちが嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいです。 シャロムのところで森の子の活動をさせてもらったおかげで、パーマカルチャー塾の活動に触れることができ、自然体で生きていこうとする人達と出会うことができ、「所有より共有」という豊かさを感じました。 子ども達は、休み明けにびっくりすることでしょう。 森の子 けいこ □
PM0:00〜 お待ちかね、シャロムのカレーとピザの昼食。そして暫しの休憩。 □
PM2:00〜 建築実習 U ― 野地板・床張り 午前中の、一気に上棟まで持っていったの作業の疲れと、ひとつ大きな山を越した事での安堵感・脱力感からか、午後の出だしは少し足取りが重い。しかし元気印臼井さんの迫力に押され、垂木の釘打ち、切断、野地板張りと作業は進んでゆく。垂木・野地板は長めに出しておいて後で丸鋸で切り落とす。(こうすると先端を綺麗に揃えられる。) ここで、外壁の下見板張りの角の納まりをどうするかという話から、南京下見板張りを、角を綺麗に納め易いドイツ下見(上下の板の重なり部分を相决りにする。)に変更する。すぐに外壁加工班が編成され作業小屋で作業に掛かる。 また別のチームはバケツ受けの台を作る。 皆それぞれに作業を見つけ楽しそうにやっている。床板を張ったところで、コンポストのバケツ用の穴を臼井さんがジグソーでいとも簡単に開け、ホホーと見ている間に簡易便器も据えられ、今日の作業は終了となる。 形を現したその小さな建物は祠のようにも見え、お地蔵さんを祀っておきたいような佇まいです。 最後に山崎さんが座り初めをし、記念写真を撮る。皆さんご苦労様でした。 □
PM3:30〜 振り返りと次回の確認 ・
蛍に感動! 光の惑星という感じがした。 ・
コンポストトイレの名前は「ホタル」が良い。 ・
自然の中には綺麗なものがたくさん有ることに気づいた。 ・
今迄にやった事の無い経験が出来て良かった。 ・
自分の作った部材がきちんと納まって安心した。 ・
組み上がったトイレは美しかった。 ・
皆逞しくなって来ている。色々な事に臨機応変に対応できるようになってきた。 ・
1か月毎に来る度に変わってゆく周りの風景を見るのが楽しみ。 ・
ナイトハイクで、片目を閉じて光を見つめた後で見た森の景色が強く印象に残って いる。 ・
建築の面白さに目覚めた。 ・
講義での、‘自然界はゆっくりと速くかつ休み無く動いている。’というのが印象に残っている。 ・
間違った時の対処の仕方が重要。間違ってもそれを生かして行く事が大切です。 ・
大勢だと一人では出せない力が出る。 皆、だんだん解放され野性に返りつつある様な気がする。 皆それぞれに楽しい2日間を過ごし、新たな発見もあったようです。 最後に次週のギャザリングの確認をし、今回出来なかった「情報の循環」については、9月に各自考えたものを発表するという事となりました。 たっぷりと楽しんだ今回の塾もこれで解散です。皆ありがとう。 ■
コンポストトイレ作りのこれまでの流れ(計画〜上棟)(今回は関らなかった事も含む) ○計画―どのようなトイレにするのかの検討 実現できるかどうかを別にして夢や理想を掲げ、最後にそれを実現させるにはどうすれば良いかを検討し、具体的な案とする。 ・
森の中の建物としてどのようなものにしたいか。 ―周辺環境との関係について考える。(場との応答、場所性に対する検討) ・
トイレとしてどのようなものにしたいか。 ―建物そのものの有り様について考える。(機能、空間の検討) ・
コンポストトイレとしてのシステムをどうするか。 ―今回の特殊な条件を成立させる為のシステムについて考える。 ○設計―具体的な形にし、施工に必要な図面を書く。 ・
平面図、立面図、断面図、伏図、軸組図等で表現する。 ―木材には流通している定尺寸法が有るので、なるだけ無駄の出ないように計画する。 ○材料・道具の調達 ・
図面より必要な材料をリストアップし調達する。 ―ホームセンター、材木屋等で購入する。(木材は材木屋さんの方が良いものが有る。ホームセンターにはしっとり濡れている様な未乾燥材が有るので要注意。) ―他で要らなくなった物をもらってくる。又は不用品を転用する。 ・
必要な道具を揃える。 ―ホームセンター、金物屋等で購入する。(店員に相談して、自分の使用目的と使用頻度に合った物を買うようにするのが良いと思います。ホームセンターには安いけれどもすぐに壊れるような物も多い。金物店ならば相談すれば中古品も手に入れられるかもしれません。) ―インターネットのオークションで購入する。 ―友人、ホームセンター、レンタルショップ(レンタルのニッケン等)で借りる。 ○工事 ◇遣り方(柱や壁の中心、基準となる水平線を表示するもの) ・ 建物の位置を決め、外周の中心線の角に杭[地杭]を打ち、ビニールの紐等[地 縄]を張る。 ・ 地縄の外側2/3尺の位置に杭[水杭]を打ち(基礎の穴を掘るなどするのに邪魔にならないよう離す)、レベル、水盛り器などで基準となる高さを印す。 ・ それに上端を合わせて小幅板[水貫(みずぬき)]を打ち付ける。 ・ 水貫に柱・壁の中心墨を出し、対面する水貫間に水糸を張る。 ◇土工事・基礎工事 ・ 水糸の交点(柱位置)の地面に印を付け、水糸を外す。 ・ 基礎よりも一回り大きく穴を掘る[根切り]。 ・ 水杭・水貫に出してある基準から位置・深さを確認する。 (根切り深さは凍結深度以下とする) ・ 根切り底に握り拳大の石や砕石を敷き、良く突き固める。(今回は踏み固める) (位置を正確に出したり、鉄筋・型枠を組む場合には捨てコンを打つ。) ・ ボイド管を据える。(又は型枠を組む。) ・ 周りを土で埋め戻し、良く突き固める。 (今回はコンクリート打設後ボイド管は埋めたままにするので、ここで固定 の為に埋め戻したが、型枠等をばらして撤去する場合には型枠撤去後に埋め戻しをする。) ・ ボイド管にコンクリート打設の高さを印す。(今回は釘を打つ。) ・
コンクリートの打設、天端均し。柱の固定用に羽子板ボルトを埋め込む。 (正確にボルト類をセットするためには、予め型枠に固定しておく。) ◇木工事(墨付け、刻み、建て方) ・ 各木材の節や材の表情などから使用場所を決める。 ・ 基準線、ホゾ、ホゾ穴等の位置の墨付けを行う。 ・ 墨に従って切る、穴を開けるなどの加工をする。 ・ 仮組みして刻みが間違っていないか確認する。 ・ 実際に基礎の上に組上げる。[建て方] ―水平・垂直を確認し、仮筋違いで固定する。 シャロムヒュッテ 臼井さんへ |