シャロムヒュッテ自然農レポート第一回 平成17年4月10日(日)
耕さない田畑「自然農」
自然農、それは「耕さず、肥料、農薬を用いず、草や虫を敵とせず」川口由一さんが提唱する農的暮らしだと思います。今回長野県、安曇野のシャロムヒュッテで小田詩世さんのご指導のもと教えていただいたこと、感じたことを皆さんと分かち合えたらと思い書かせていただきました。
はじめての畝作り 信州の大自然の中、学習会は始まった。
シャロムのある安曇野も暖かくなり、ようやく姿を見せた地を這うクモや畑全面に咲くオオイヌフグリをかき分けての畝(うね)作り、そして種まきをシャロムから徒歩1分の畑で行いました。総勢24名が囲む中、小田さんは最初で最後の畝作りをまず教えてくださいました。自然農の畑では、基本的に耕すことはしません。ですから、一度畝を作るとず〜とその畝を利用します。まずは、畝になる予定地の草をのこぎり鎌で根を残して刈り取ります。※1 そして、溝であり、通路になるところの土をスコップで掘り、先ほど草を刈り取った裸地に土を盛り、かまぼこ型の畝を作ります。(畝を作る目的は、様々で、栽培する箇所を明確にするのみならず、モグラの進入通路を絶つ意味もあります。)そして、畝に先程刈った草を被せます。(自然界では、がけ崩れを除き、土がさらされている箇所はまれです。
草の中での種蒔き 刈った草は元に戻します。
次に、種まきです。耕さない田畑にどのように種を蒔くかといいますと、まず表土の土を2〜3センチどけます。耕さないと地表に草の種があります。この草の種をどけるとく草は生えてきません。
耕してしてしまうと草の種が地中に入りよい条件になりいたるところから芽を出します。
そして草の根は、宿根草類を除き、そのままです。表土をどけた後根切りをします。耕す時は前進し、土を平らにする時は後進するとキレイに土をならせます。そして、鍬の背でとんとんと土を平らに整えます。
鎮圧します。自然農は最初が肝心。最初に丁寧すぎるくらい丁寧にしてあげれば、後々とても楽ができるので最初は愛情込めて種のベット(畝)を作りましょう!子供を
育てるのと一緒です。3歳まではお母さんが抱きかかえ愛情を注ぎます。野菜も一緒です。
←表面の草をのこぎり鎌で刈ってあげます。
鍬で地表1〜2センチの表土を取ります。耕さないと表土に草の種があります。
表土をどけた後根切りをします。「耕す時は、前進!」 「ならすときは、後退」
鍬や手のひらで鎮圧します。水分は地中から補えます。
苗床作りの方法です。そして、いよいよ種まき。チンゲンサイやレタスといった種は、すじ蒔きか、一面ばら蒔き。種の大きさの3倍くらいの厚さの土※2を丁寧に両手でもむ様にぱらぱらとかけてあげましょう。そうしたら刈った草の布団をかけてあげましょう。もし草が多いようなら、発芽したら草をどけ、草の量を減らしてあげましょう。※3
野菜の種類で、畝を四等分。 チンゲンサイを蒔くためにすじをつけています。
ジャガイモの植え付け
私も驚いたのは、ジャガイモの植えつけでした。鍬で約8センチの穴を掘り、じゃがいも(この日は、種芋のジャガイモはなくジャガイモを想定してやりました)入れ、掘った土をそのまま崩さず元にもどします。そうすると元の草だらけの状態、どこに植えたかわからなくなってしまったからです。普通ジャガイモは、一列に溝を掘りそこに並べていき土をかけるのですが、植える処だけ穴を掘るやり方に、「ジャガイモのかくれんぼ」と名をつけたくなりました。ちなみにジャガイモは種芋の上に5センチほど土がかぶさっていればよいとのことでした。
自然農の水田
次に車で15分ほど行った田んぼに籾まきをしにいきました。田んぼの中に稲の苗を作る伝統的な「陸苗代」の実演です。まず、去年の稲株をのこぎり鎌で切り取り、畑の時同様に鍬で
表土を取り根切りをします。ならし、軽くたたいて平らに整えます。鎮圧
1反当り7合の籾※6を準備し、たらいの水に沈めます。
このとき浮いた籾は、中が空なので捨ててしまいます。
その籾をザルで水をよく切り、新聞紙などの上で水気を十分とってあげます。
水気を取ることで、非常に蒔きやすくなります。苗代の上から手で指の間からパラパラと蒔きます。
そして、蒔かれた種の間隔が2〜3センチになるように丁寧に籾を配置し直してやります。
※4そうしましたら、籾が隠れるくらいの土をもむようにパラパラかけてやります。
すっかり籾が隠れたら、鍬のせで軽くたたき土をなじませます。
(品種を混ぜたくないので、)できれば同じ品種の稲藁(いなわら)を「押し切り」(稲藁を切る昔ながらのど道具)で5センチくらいに切って、それを土の上にまんべんなくかけてやります。
今度は、長いままの稲藁をそのままならべてかけてあげます。
これは湿気を保ち発芽をよくします。
※5そして、稲藁が飛ばないように、木の板で押さえてあげます。
稲が発芽したら、長い稲藁はとり、それを「押し切り」で細かく切り、かけなおします。
種籾の量
*寒冷地の場合 一反(300坪)につき約7合〜1升
→できた苗を25〜30×40センチの1〜2本植えにする
*奈良の川口さんの所では、一反につき5合
→40×40センチの1本植え
苗床の広さ
*一反につき 1.4m×18mくらい、または1.2m×20mくらい
*または、種籾一合につき1.2m×2mくらい(寒冷地で、25〜30×40cm植
え)
シャロムの田んぼは約3畝(1畝=30坪)なので、種籾の量は2合で行こうという
ことになりました。
苗床の広さは、1.2m×4m必要ということになります。
苗床作りは細かくて時間のかかる作業で、つい適当にやってしまいたくなりますが、ここでどれくらい丁寧にするかで苗の出来具合も変わってくるので、お米の苗床作りは、ゆっくりと丁寧にされてください。
また、この数値は目安として出しているものなので、そのうち、経験をつめば、計算などしなくてもちゃんとできるようになってくることと思います。
田んぼのはじに、陸苗代を作ります
畑同様のこぎり鎌で、
草を刈ります。表土をどけて
鍬で根切りをします。
丁寧に整地します。
種籾を水に入れ、浮いた種は除きます。
水に沈んだ籾だけを、水を切ります。
種まきです。指の間から均等に蒔きます。
種籾の間隔が3センチになるように、ひとつひとつ愛情込めて
種籾が隠れるくらい、土をかけます。
鍬の背で、軽く押さえて
鎮圧します。
押し切りでわらを細かくします。
切った藁を均一に敷きつめます。
長い藁のままさらに重ねます。(二重布団)
これにより湿気を保ちます。
風に飛ばされないように、重しをのせて完成!!
そして、苗代の周り90センチくらいは残し(ここは苗代の雑草とりなどの足場になります)その外側に溝を掘り、モグラがよけを作ります。
足場はばを残して、モグラよけの溝を掘ります。
感想
今回は全国各地から集まった皆さんは、初めて教わる新しい自然農の技術ばかりでなく、自然農がもつ「命の営み」にそって生きることを感じ、各々の胸の内に何かが芽生えたようなそんな学習会でした。
次回は
次回は、田んぼのあぜ塗り、大豆・インゲン・サツマイモなどの播種または植え付け定植。そして一ヵ月後の田畑の状態が今から楽しみです。つたない説明でわかりにくいと思います。是非そんな方は、川口由一著『自然農 川口由一の世界』(晩成書房)、『自然農から農を超えて』(カタツムリ社)、『妙なる畑に立ちて』(野草社)をご覧下さい。
注釈
※1)自然農ではのこぎりの刃のついた鎌で地表に出た草の部分を刈り、根は地中に残します。
※2)種蒔き用の土は、草の種の混じらないものがよい。
※3)発芽して草が多すぎると、もやしになってしまいます。草をどける時は、直射日光
の弱い、曇りの日か、夕方がよい。
※4)とても地味な作業ですが、今後の苗の生育上非常に大切な作業です。
※5)稲藁の二重ベットは、乾燥を防ぐだけでなく、鳥から身を守ります。
※6)種籾の量:寒冷地の場合 一反(300坪)につき約7合〜1升→できた苗を25〜30×40センチの1〜2本植えにする。
奈良の川口さんの所では、一反につき5合
→40×40センチの1本植え
苗床の広さ
*一反につき 1.4m×18mくらい、または1.2m×20mくらい
*または、種籾一合につき1.2m×2mくらい(寒冷地で、25〜30×40cm植え)
臼井さんの田んぼは約3畝(1畝=30坪)なので、種籾の量は2合で行こうということになりました。
苗床の広さは、1.2m×4m必要ということになります。
竹内 孝功(たけうち あつのり)
福岡正信氏の自然農法をはじめ、川口由一さんの自然農、岡田茂吉氏の自然農法などを学ぶ。現在(財)自然農法国際研究開発センターで研修中。人の数だけ農法があると思っている。自然の真理を学び、無理無駄がないオシャレなオーガニック「ナチュラルオーガニック」を多くの人に紹介したいと思っています。『自然農・自然農法で自給自足のマニュアル(仮称)』小冊子を出版したいと思っています。
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