2006.安曇野自然農学習会
日時 2006年8月20日(日)
講師 佐伯彰(さえき・あきら)竹内孝功(たけうち・あつのり)臼井健二(うすい・けんじ)
レポート こう・ぷみん
あふれるいのちがありました。草が繁り、実を結び、いのちが勢いづいています。耕さなくても、肥料をやらなくても、草や虫を敵としなくても、自然農の畑には立派な野菜が育っています。今回、長野県安曇野のシャロムヒュッテでは、竹内さん、佐伯さん、臼井さんはじめ、50名近くの方々とともに自然農を分かち合いました。それぞれが身の丈にあった暮らし方、自然農を実践していく姿は心地よいものですね。
今回は、キャベツ、ソバの種まき、シャロムヒュッテ流かんたん種まき(大根)、白菜の苗の移植、大根の自家採種、田んぼの観察をしました。
自然農の畑は、自給用に適しています。と臼井さん。自然にすべてをまかせる放任ではなく、自然の力を活かしながら、手間をかける必要のあるところは丁寧にする。作物が、草の勢いに負けてしまいそうなときは、草を刈りとり株元に敷く。草を敵とせず生かしながら草を抑え、土を豊かにしていく。
土は、草を生やし、まわりを豊かにすることで、自分自身も豊かさに包まれていく。土は、草も野菜も分け隔てなく育んでいるようです。豊かに育っていく土のなかに、人の手で、野菜も育つようにと草をかき分け仲間入りさせてもらう。自然農でいう、草も虫も敵としない、という考え方は、何もしない放任ではなく、自然にある豊かさを信頼して、育てる暮らし方なのかもしれないですね。
自然の豊かさ、力に沿うことを理解し経験している人ほど、人が手間をかける時期、絶妙さを肌で感じてわかっているようです。
「今年は、ケガのため、畑の手入れができず草が繁りすぎてしまった。必要なときに、少し手入れをすることで、草の勢いに負けないもっと素晴らしい畑になった」と、臼井さん。それでも、畑には、いのちいっぱい実っています。
庭にあるパーマカルチャーガーデンでは、稲が穂を出しています。
自然農で使う道具は、のこぎり鎌と鍬。この二つがあれば種を播くこと、野菜を育てることができるのです。とても簡単な方法です。
有機農法の収量を100とすると、自然農のやり方では収量は60ぐらいかもしれません。それでも、自然農のやり方を続けることで、毎年、土ができていくのにつれて、その60が増えてくるのです。
100点を目指して、60で良しとする生き方。そもそも、求めているのは何に対する点数。どれも自分自身で選択できる暮らし方ですね。
● キャベツの種まき苗床の作り方
種の播き方は、今までと同じです。種を播くところの草を刈り、種を播きます。その上に土をかけ、鎮圧し、敷き草をする。5月のキャベツ、レタスの苗床づくり種まきのレポートを参考にしてくださいね。
メヒシバのようなツンツンした葉の草は夏草なので、そのままにしておくと枯れていきます。ハコベ、オオイヌノフグリのような冬草は、今から芽を出し育っていきます。夏草、冬草の様子にも目を向けると、その時折での草の畑に対する関わり方が見えてきて興味深いですね。
(手順)
@のこぎり鎌で、種を播く部分の草を刈り取る。
A 表土を1cmかきとる。
表面の土には無数の草の種が落ちています。これを耕すと、草の種が芽を出すのに良い条件になります。だから、表面の土を深さ1cmくらい取り除くことで、草の種を取り除きます。取り除いた土は片側によけておきます。
B 表土の根を断ち切る。
のこぎり鎌で表土にある根を切ります。のこぎり鎌で軽く耕してあげる感じです。このとき宿根草や大きな根があれば脇によけておきます。
C
土を平らにする。
背が平らな鍬、なければ、手のひら、とにかく表土を平らにします。表土を平らにすることで、キャベツ同士が競争せずに成長します。
D キャベツの種を播く。
種を播くときには、写真のように、指の隙間から播きます。一度に播かず、往復しながら播くと均一に播けます。
E 覆土する。
畝脇の溝から、表土を除けた下の土を掘り出し、種の大きさの2〜3倍の厚さで覆土します。
F 土を鎮圧する。
鍬の背、あるいは、手で表土を押さえます。押さえつけることにより、覆土した土と畝の土が馴染み、水道(みずみち)がつながり、土の下層から水分を吸収できます。自然農では、水を遣りません。自己発芽を促し、生命力のある野菜を育てます。一度、水をかけて栽培すると、その後も手をかけてあげる必要がでてきます。
G刈った草を敷く。
発芽までは、日光にあたって乾燥するのを避けるために、敷き草をし、水分を保ちます。大きな葉は、葉が大きく、芽がでるときに日陰になるのでさけます。芽が出始めたら、敷き草を取り除き、日当たりが良いようにします。
毎回、種まきのときに聞くとおり、、野菜が幼いときの作業は、特に丁寧にします。「子育てと同じで、3歳までは愛情をかけて丁寧に接
します」 川口さんは、これほど丁寧にするのか、と思えるほど丁寧にしています。はじめを丁寧にすることで、後々楽です。
● シャロムヒュッテ流かんたん種まき(大根の種まき)
シャロムヒュッテオーナーの臼井さんから、のこぎり鎌一本で種を播く、すてきな種の播き方を教えていただきました。家庭菜園でもできる簡単な種まきです。これならお手軽にできそうですね。
(手順)
@
のこぎり鎌で、種を播く部分の草を刈る。
A
表土を1cmかきとる。
B
表土の根を断ち切る。
C
土を平らにする。
D
のこぎり鎌で溝をきる。
E
大根の種を播く。
F
覆土しながら、土を鎮圧する。
G
刈った草を敷く。
@
のこぎり鎌で、種を播く部分の草を刈る。
A 表土を1cmかきとる
B 表土の根をたちきる。
「自然農では、まったく耕さないというわけではありません。よく根切りと称して鍬を入れることもあります。有機質のない土は、かたくなに手を結んでいます。その手をほぐしてやるといいですね。それは人間でも一緒です。初対面だとかたくなに手を結んでいます。そこで会話が手を開かせます。人間界では会話が重要です。それは理解を生み人を結びます。土にとっては会話は空気層なのです。自然農の畑は団粒化が進みいつも手を広げている状態です。もしも固いようだったら(土の中に空気を入れてあげる 耕す)ことで、かたくなに手を結んでいる土が、ほぐれて土が懐を開けてくれます。開いたところに種を播いてあげるのです。なんだか人との関係と同じですね。」と臼井さん。
C 土を平らにする
Dのこぎり鎌で溝をきる。
E大根の種を播く。
のこぎり鎌で溝をきったところに、2〜3粒づつ25p間隔で種を播きます。自家採種した場合は、5粒と多めに播いてもよいですね。
F鎮圧する 土を押さえるだけで発芽率が20パーセントくらい上がります。水道がつながり大地に湿り気で発芽します。
G刈った草を敷く。
すべての草は有用です。草を刈り、敷き草にすることで乾燥を防ぎます。敷き草も乾燥すると少しの量になります。多めに草をかけた場合には、2、3日後、芽が出てきたときに敷き草を取り除いて、日あたりが良いようにします。
みんなで実際に、大根の種まきをやってみました。
(条間40cm、株間25cm、2粒播き)
まずは草を刈り取り左側に置きます。草を刈り取り、表土が見えたら、表土の草を取ります。
表土の土を脇にのけ、株間25cmで2〜3粒づつ種を播きます。土をかけ、その上を手袋、足で押さえつける。刈った草を表土にかける。草をかけることで、鳥に食べられるのを防ぎ、保水力を保ちます。
大根は秋口10月下旬に収穫予定です。2ヶ月後が楽しみですね。
● ソバの種まき
草の上から、そのままソバを播く。一見、驚く方法ですが、実は、無駄がない、自然の理に沿った種の播き方です。
(手順)
@
ソバを播くところを決め、草の上からそのままソバの種をまく。
A
草を地際で刈り取り、敷く。
B
敷いた草の上を歩く。
@
ソバを播くところを決め、草の上からそのままソバの種をまく。
指の間から、ソバの実を落としていきます。往復して播いていくと、良い具合に均一に種がこぼれます。
A 草を地際で刈り取り、敷く。
B 敷いた草の上を歩く。
秋口には、背の高い草は生えてこず、ソバの生長は他の草よりもはやく育ちます。
敷いた青草は、枯れると小さくなり、その隙間から光が入ります。敷いた草を踏むことで、水分が地表に上がってきて、ソバの発芽を促します。
●
白菜の苗の移植
(手順)
@
移植先の草を刈る。
のこぎり鎌で、移植する先の草を刈り取ります。草を刈るときは地際で。草の成長点を刈り取ることで、それ以上、草は生えてこなくなります。
A植え穴をあけ、水をやる。
移植は、曇りや夕方が適しています。今回のように、晴れていて土が乾燥気味のときには、事前に植え穴にたっぷり水をやります。移植した後に水をやると根の下まで水が届かないので注意。自然農では、定植した後は水やりをしません。干ばつの時は様子をみて水をやることもあります。
B
苗の準備
苗には、移植する1時間前にたっぷり水をあげる。移植時に軽く湿っているのが良い。「苗は根が命。根は人間でいう内臓と同じ。それほど植物にとって根は重要な部分」と佐伯さん。根が切れないように、ひとつずつ丁寧により分けます。移植ゴテで掘りあげ、そのまま、先の移植穴に植えます。移植するときには、苗が移植されたことに気づかないくらい丁寧にします。
C苗を植え、株元に草を敷く。
白菜の苗の根に土がついたまま、穴に入れ、まわりの土となじませます。苗の根元の土を押さえ、周りの土と同じ固さにします。一体感をつくります。最後に苗の根元に、乾燥させないように刈り取った草を敷きます。
「白菜やキャベツなど葉物は、秋はコオロギが多く食べられやすいので、苗床でつくると管理しやすい。」と臼井さん。
●大根の自家採種
「大根の種採りは、サヤが固くて大変。農家で自家採種するときには、大根のサヤを割るためにわざわざ軽トラックでその上を往復するほど。それでも、自然界をみてみると、見事なほど、大根の種は発芽に適している」と竹内さん。大根のサヤの部分は、保水タンクになっており、水を十分に吸収すると、自然に種が根を出し、発芽するようになっています。
(自家採種の手順)
@
手箕(てみ)にサヤごと種を入れる。
A
サヤを上から足で踏む。
サヤが割れて、サヤと種に分かれます。
B 手箕(てみ)をふる。
軽いサヤは地面に落ちて、手箕の中に種が残ります。
● 田んぼの観察
穂が出始めていました。今の時期は、人間でいうところの妊娠している時期です。この時期、草が繁っていても、田んぼの中に入って草を刈り取るのは好ましくありません。出穂(しゅっすい)までに草を刈り、敷いておきます。
畔豆(あぜまめ)。紫色の花がふっくら咲いています。枝豆で食べるのもよし。熟した大豆にして食べるのもよし。9月から10月にかけて収穫時期です。
田んぼで記念撮影。
振り返りと自己紹介タイム
名前、どこから来たのか、今関心があること。
二ヶ月ぶりで、暮らしが変わりつつある人、新たな関心がでた人、今ある暮らしに関心がでた人。私自身、自覚するのは、暮らしを楽しんでいる人たちに、おめでとうと素直に言えるようになったことですね。
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