パーマカルチャーとは、オーストラリアのビル・モリソンとデビット・ホルムグレンが構築した人間にとっての恒久的持続可能な環境を作り出すためのデザイン体系のことです。
この言葉は、パーマネント(永久な)とアグリカルチャ−(農業)あるいはカルチャー(文化)を組み合わせた造語です。
パーマカルチャーの祖、ビル・モリソンは、パーマカルチャーの目的を「地球を森で覆い尽くす」ことと言った。
人類が永久に存在し続けるために、農薬などで土地を痛めることなく、自然の恩恵を最大限に受けることに注力していく時代となりつつある。
パーマカルチャーは、伝統的な農業の知恵を学び、現代の科学的・技術的な知識をも組み合わせて、通常の自然よりも高い生産性を持った『耕された生態系』を作り出すとともに、人間の精神や、社会構造をも包括した『永続する文化』をかたちづくる手法である。
ニュージーランドに見る 田舎暮らしのデザイン
単にエコロジカルでなく より美しく、よりオシャレに 暮らしをデザインしたいものです。その一つの見本となるのが 今話題を呼んでいるパーマカルチャーです。今回はニュージーランドのレインボーファーム等を実例として 生物資源の活用 多機能性等 パーマカルチャーの基本原則を実際に生かしたくらしのデザインを紹介していただきました。
写真文 森谷博
パーマカルチャーの基本になる3つの要素は、
自然のシステムをよく観察すること
伝統的な生活(農業)の知恵を学ぶこと
現代の技術的知識(適正技術)を融合させること
それによって、自然の生態系よりも生産性の高い「耕された生態系(cultivated
ecology)」を作り出します。
そしてパーマカルチャーは植物や動物だけでなく、建物、水、エネルギー、コミュニティなど、生活全てをデザインの対象にしています。それぞれの要素が、それぞれの役割を十二分に果たし、互いを搾取したり汚染したりすることなく永続するシステム=エコロジカルで、経済的にも成り立つシステムを作り上げるのです。それは自然を豊かにし(多様性、生産性)、人間の生活の質(精神的な充足感)をも豊かにします。
パーマカルチャーの体系を作り上げたオーストラリアのビル・モリソンは、パーマカルチャーの目的を「地球上を森で埋め尽くす」ことだと言います。そこでは人為によって失われた生態系を回復し、人間が自然環境に溶けこみ、自然の一部となって生きる姿があります。それは日本の里山や世界の先住民族がしてきた生活です。それを現代的にアレンジしたものがパーマカルチャーとも言えます。
つまり、森羅万象の関係性をいかに“美しく”デザインするか、それがパーマカルチャーの目指すところだと考えます。
下記のページはシャロムの仲間である森谷さんが記したものです。とてもきれいな映像です。
Introduction to Permaculture
パーマカルチャーって何?
Say YES! で始まった
パーマカルチャー
パーマカルチャーがオーストラリアのビル・モリソンとデビッド・ホルムグレンのふたりによって体系づけられたのは有名な話。タスマニアに生まれたビルは、大地と海とを相手に、漁師や森林労働などさまざまな仕事をして暮らしていた。しかし彼は、周りの環境が急速に失われていることに気づく。
やがて環境保護運動に身を投じるが、ただ反対することでは何も変わらず疲れるだけだった。そこで彼は発想を転換した。「NOと言わず、YESと言おう!」彼は反対することを止め、失われた環境を本来あるべき姿に戻す作業を始めたのだ。ただ反対したり現状を告発することではなく、具体的にどうすればいいのかを提示し、実践する。そこからパーマカルチャーは始まった。
農法? デザイン?
ライフスタイル?
パーマカルチャーは、Permanent Agriculture、あるいはPermanent
Cultureから作られた言葉。しかし、皮肉なことに私たち一人ひとりの人間の人生は永遠ではない。彼らが目指したのは、より永続的な、より持続可能なライフスタイルの構築だった。
パーマカルチャーの実践に決まったスタイルはなく、目指す方向性があるだけだ。100人いれば100通りのパーマカルチャーがある。
では結局、パーマカルチャーとは何だろう?
ラジカルなライフスタイル・
デザインの手法
パーマカルチャーは、@自然そのものを観察し、A世界中の伝統的文化の知恵を学び、B現代の知識を融合させ、全ての人に適応可能なようにまとめられたライフスタイルのデザインシステムである。忘れ去られてしまった常識を再編成し、今まで気がつかなかった関係性にも目を向ける。あえていうなら、森羅万象の関係性をじっと見据え、それらをいかに美しく、気持ちよく配置し、つなげて行くか。それは今までの世界観を根本から、ラジカルに変えていくことになるかもしれない。しかし、それがパーマカルチャーの目指すところだ。
パーマカルチャーは、この21世紀の世界をサバイバルしていくための問題解決の方法とデザインの基本的な技術を提示している。パーマカルチャーは決してひとつの農法でもなく、のんびりした田舎暮らしのマニュアルでもない。
パーマカルチャーは
あなたの人生を変える
パーマカルチャーを知ると、あなたの人生は多かれ少なかれ変わる。世界を見る目が変わってしまうからだ。パーマカルチャーと出会って会社を辞めた。こんな人はもはや普通の存在である。しかし、会社を辞めなくてもいい。今いる場所でできるパーマカルチャーがあるからだ。それを見つけ、実践するのはあなた自身だ。
3つの倫理
パーマカルチャーをデザインし、実践する上で基本となる倫理。倫理というと堅苦しいけれど、価値観といってもいい。
@地球への配慮
地球の存在なしに、人間の存在はあ り得ない。また、人間は大地の守り人。
A人への配慮
まずは一番近しい人への配慮、つま り自分自身。そしてすぐ隣にいる恋 人、家族への配慮。さらに遠くの空の下、同じ地球の空気を吸っている人びとへ
B資源を共有する
他者から奪うことなく、分かち合う。 与え合う。
12の原則
パーマカルチャーを実践、デザインするときの基本的な原則。人間のライフスタイルを例にあげる。
@ 関連性のある配置をする
適材適所。他者とのつながりを大切に。
A 多くの機能を持たせる
百姓であれ。でも得意分野も持つ。
B 多くの要素が存在する
さまざまな個性が存在した方が豊か な社会になる。
C 効率的なエネルギー計画
移動も効率的に。シンプルな生活を。
D 生物資源を使う
生き物を使って仕事をしてもらう。 実は人間が一番身近な生物資源。自分の体を使おう。
Eエネルギーを循環
ポジティブなエネルギーを循環させ、
ネガティブなエネルギーを垂れ流さない。
F 小規模集約システム
小さく始め、そこに持っているエネルギーを十分つぎ込む。
G 遷移と進化を促進させる
変わるのは今この瞬間。
H 多様性
みんなが違っていい。
I 接縁効果を最大に
触れ合うことでエネルギーが増幅する。
J パターン
観察することで美しいパターンを見つける。日常の立ち居振舞いを見直す。
K 態度
実はこれが一番大切。考え方のパターンを変える。
問題は解決だ。あるいは、問題は自分自身の中にある。
全ては両方に働く。悪いことは、良いことでもある。
競争ではなく、協力。
負荷を最低に。無理をしない。
怖れるな、しかし注意深くあれ。
自然と共に作業する。人間は支配できない。
バランスを取る。
デザインの対象
それぞれに適切な関係を持たせ、互恵的な集合体にする。
@ 場所の構成要素
水、土、景観、気候、植物…
A エネルギーの構成要素
技術、建物、資源、外部とのつながり…
B 抽象的構成要素
時間、情報、倫理…
C 社会的構成要素
人びと、公的援助、文化、貿易・金 融…
デザインの4つのステップ
デザインをしていく過程は、絶えずフィードバックをかけながら作業する。
@情報を集める
A 観察する
B 話し合う
C 実践、実施する
実践の10の分野
パーマカルチャーを実践する具体的な分野の例をあげる。以下の項目はオーストラリアのパーマカルチャー・アカデミーが、デザインコース修了者で2年以上の実践を積んだものに与えるDiploma(学位)の分野である。このようにパーマカルチャーといっても、田舎で自給的な暮らしをしなくとも、普段の社会生活の中で実践できるものだということがわかる。
@ 教育
パーマカルチャーについて教える、 パーマカルチャー的視点から教える。
あらゆる種類の教育が含まれる。 学校、企業、インターネット、NPO…
A メディア
記事にしたり、番組にしたり、パー マカルチャーを広める。
B サイト・ディベロップメント
農場、エコビレッジなどで働く、あるいは農場やコミュニティーをパーマカルチャー的に作る。
C サイト・デザイン
田舎であれ、都会であれ、パーマカルチャー的に土地やコミュニティーをデザインする。
D コミュニティー・サービス
障害者、老人、ホームレスなどに対するケア。コミュニティーガーデン を作る…
E 金融&ビジネス
地域雇用、LETS、地域通貨、生活協同組合、環境ビジネスなどの促進、モデル作り。
F 技術開発
エネルギー、リサイクル、交通、加工、保全などのシステム開発および実践。
G 資源開発
天然資源、植物や種子、家畜などの保存、効果的利用法。
H 建築
環境に配慮した建築の設計、施工。
I 調査研究
パーマカルチャー全般に関する、実践的、理論的調査研究。
さあ、始めよう!
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オーストラリア、ニュージーランドのパーマカルチャリストたちは口々にいう。「日本には素晴らしいパーマカルチャーがある(あった)ではないか」彼らは、日本の里山文化のことをいっている。日本でかつて当たり前にあった、人と自然が有機的かつ生産的なつながりを持った空間。村落共同体と自然環境(生物、田畑、森や山、水、空気など)が存在し、人間が周りの環境に働きかけ(食料や建築素材の栽培・採取、薪のエネルギー利用、山林の維持管理など)、その生活から生み出される知恵や技術をベースとした永続可能なコミュニティー文化を作り上げていた。それはまさにパーマカルチャー。もう一度、日本の伝統を見直してみよう。
ひとりが変わると世界が変わる
数年前から日本でパーマカルチャーに興味を持つ人が急に増えてきた。あなたもそのひとりだ。このままではいけない、何かしなければ、と気づいた人たちが増えている。仲間はたくさんいる。
しかし、始めるのはあなた自身だ。最後にパーマカルチャーの創設者のひとりであるデビッド・ホルムグレンの言葉を贈る。
地球上で一人ひとりが暮らし方を変えれば、とてつもない社会的な変革が達成できる可能性がある。パーマカルチャーの重点が一人ひとりの態度の変革に重きを置くのもそのためだ。パーマカルチャーが主張する変革は底辺から、一人ひとりの内から始まる。裏庭や家を起点に地域社会、世界、地球、宇宙へと広がっていくのだ。
デビッド・ホルムグレン
あるいは逆のことを言っているようでもあるがこの言葉も…
あなたの為すことは、ほとんど無意味であるけれど、それでも、やらなければならない。世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするために。
マハトマ・ガンジー
(文=森谷博)
パーマカルチャー・センター・ジャパン、安曇野パーマカルチャー塾、Be Good
Cafe、パーマカルチャーネットワーク九州、パーマカルチャーネットワーク広島、アース・スチュワード・インスティテュートなどでは、パーマカルチャーを学べる講座を開催しています。
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