8月19日(土)担当:堂野 美紀
講義:Transition Towns
ソーシャル・パーマカルチャーの実験活動
トランジション・タウン=持続可能に移行する町
〜激動の時代を地域コミュニティーと自然のチカラでのりこえていく〜
*講師
大村淳さん
奥さんのともこさんと共に愛知県浜松市でトランジション・タウンの活動を7年前に始める。その中でもソーシャル・パーマカルチャーに焦点を当てた活動を展開。
大村ともこさん
まちづくり、ガーデンを中心とした食生活を実践。いただき物と廃材で成り立つコミュニティーカフェの運営、こちらを紹介するツアーも実施している。
*ソーシャル・パーマカルチャーとは?
人の関係性、コミュニティー、社会のデザインの中でパーマカルチャーを展開する。
・ソーシャル:社会、コミュニティーの中の顔の見えない部分も対象としていく
・トランジション:移行、転換、過渡期、遷移、持続不可能から持続可能な社会への転換
*持続不可能とは?
今の暮らしを支える資源とエネルギーはいつかなくなる!
化石エネルギー、鉱物資源、レアメタル、etc →50-100年で枯渇
私たちの暮らし=持続不可能
インプット
地球の豊かさ(水資源、水産資源、鉱物資源、石油やガス、労働力、土地、食料、森林資源)
↓ 加速する生産、消費、廃棄のサイクル
アウトプット
地球の豊かさを劣化、縮小(温室効果ガス、有害化学物質、放射能廃棄物、埋立てゴミ、水質汚染)
△リサイクルにかかるエネルギーを考慮するとリサイクルが解決策というわけにもいかず…
その結果・・・気候変動、砂漠化、水質汚染、マイクロプラスティックの問題
そして、地球は今、生物史上6回目の大量絶滅時代を迎える=重要なターニングポイント
これまで
1万年前農業が始まり、産業革命、人口増加を経て、エネルギーの大量消費、汚染のピークに
これから
デビッド・ホルムグレンの4つの進化説
テクノロジー無限成長時代(AI、火星へ移住)
テクノロジー安定時代(生活スタイルは変えずに自然エネルギーによってまかなう、メガソーラー,
etc)→生産の過程で化石エネルギーに依る
創造的な対応(パーマカルチャー、エネルギーの使用量を減らす、自然の豊かさに寄って生活の質を向上)
エネルギー下降時代 or 崩壊
*持続可能な未来に向けての仮定!
システムの終末するのでそれに向けて準備が必要
準備・行動は早ければ早いほどダメージが少ない
移行は地域社会という規模で進めるのが効率が良い
移行に必要な技術、知恵、情報はすでに存在している
*トランジション・タウンの誕生から現在
持続可能な未来に向けて2005年市民運動が始まり、活動家のRob HopkinsによってTotnes,
UKに初めてのトランジション・タウンが誕生、
個人レベルから地域レベルへと広げていく発展の形をとる。
世界のトランジッション・タウンの数(2012年7月現在)
900の市町村、準備中を含めると1800の市町村
“Permaculture Flower”のうちコミュニティ、社会と人のつながりに焦点をてる
=対話型コミュニケーション、エコビレッジ、シェアハウス、トランジッションタウン
*ソーシャル・ゾーイング、コミュニティー・ゾーイング
ゾーニングをコミュニティー、社会を枠に行う
Zone 0:自分自身
Zone 1:家族、親しい関係
Zone 2:近所、友人、仕事仲間、社会活動
Zone 3:地元企業、地域社会、定期的な活動
Zone 4:国家レベルの活動、伝統、精神的文化圏
Zone 5:原生の自然、宇宙
→エッジ効果が生まれる
繋がりを大切にすることで、ベクトルがコミュニティーへと、個へと向き、相乗効果に
*シェアリング
Q1:世界はどんな状況?
二極化(火星へ移り住む/地球を大切に)と効率化(リーダーが必要。必要のない人を振り落とす構図)が進む。
深く考えず、流れに身をまかせる人が大多数、エゴ本位の中心勢力に仕組まれた世の中。一方、考え始めた人もいるのでは。
幸せの形、価値観の多様性。目先の欲にとらわれる人の存在、現在・個人の幸せの優先し、他の人の幸せや価値観を認めない、しいては人種間の対立へと。
情報化社会
メディア、マーケティング、映画の描くストーリーなどに流されて生活している?
Q2:自分たちの暮らしたい未来は?
考えてみよう。
*浜松のトランジッションタウンの始まり
デザインに人を当てはめるのではなく、ニーズ・大切にしたいものを把握することが第一歩!
始まり
地域の3人からの仲間づくり、とにかく深い繋がりを作り続ける。そしてそれを広げる。
結果、活動で繋がるよりは人と人との繋がりが生まれる
活動事例
主体性や創造性を引き出すミーティングの開催=個人が興味のあるトピックを投げかけ、それに参加できる場の提供→地域にあるテーマ別に活動のチームを作り、繋がる
形式例)ワールドカフェ、オープンスペース
生まれた活動
A. エネルギー・コンシェルジュ
アンペアダウンによってエネルギーを削減する発想 →発電機/太陽パネル 不要
家庭に周り、電化製品の使用状況を分析、アンペアダウンを提案
B. ギフト・エコノミー
物々交換の買い物システム
C. フォレストガーデン・プロジェクト
D. カウンセリング・ケア
メンバー間を観察し、フォローするカウンセラーの動き
D. 校庭を食べられる庭に
理科の実験で食べられるものを扱う、社会の授業で学ぶ各国の料理が給食になど、学ぶことが暮らすこととつながる教育
E. 地域地商=地域にお金の留まるシステム
地域の小麦農家からパン屋が小麦を買うなど
それぞれの特性を生かした自由な発想を展開している今日この頃。
さらに、活動を通して生まれる新たな繋がり。
活動を通して生まれる新たな気づきをコミュニティーへ広める。
Totnesの例
ホームレスに空き家の管理人になってもらう=地域経済・福祉の向上
カフェからコーヒーかすを集め、キノコの菌床に
ともこさんの地域をつなぐコミュニティカフェの例
工務店からの頂き物でカフェの物資、いただいた布で近所の小学生が作ってくたのれん、お客さんにいただく器、包丁、スキルのシェアなど
→人と人が出逢えば何かが起こる。さらにこの場を通して、地域の人が繋がる。
*トランジションタウンの”人間の生態系”の豊かさ
一人では広すぎるパーマカルチャーの様々な分野も、地域にすでに存在するギルドと繋がることで実現可能に。
助け合う”人間生態系”を作り出す。必要のない人はいない。
*活動の広がり事例
@菊川西中学校の総合的な学習の時間でパーマカルチャーを学ぶ
1年:パーマカルチャーの事例
2年:パーマカルチャーのデザイン
3年:デザインの実践 を学ぶ
技術の時間で自然農を学ぶ、体育でフェルデンクライスを学ぶなど、地域のゲストティーチャーを招き各授業にも広がりを見せる。
さらに校庭にエディブルガーデンが出現する、給食に自主採取したメニューが登場などの今後の展開も楽しみである。
A各地のトランジションタウンが繋がる
熊本震災、トランジション・タウン同士の繋がりを生かし、必要なものが把握でき、技術の提供がスムーズに行われる。
(日本では50以上の地域がトランジション・ネットワークで繋がっている。)
B松浦さん
退職後、喪失感→カフェでのイベントに来たきっかけに、子どもがとても好きなことに気づき、TTでの子どもの世話役になり、
母親たちの大きな助けとなる。子どもたちに様々な知恵を伝授。
*コミュニティーの広め方のアドバイス
- 地域をいきなり巻き込むというよりは、興味のある人を巻き込んでいき、規模を広げていく
- 自転車で周れる範囲の規模感を大切に
- 話し合いの場の設置などを通して、ボトムアップ型の活動が起きやすい環境の整備に尽くす
- みんながアーティスト、参加型の活動を
- チャレンジしすぎず、無理なく、自分の素直な気持ちを表現できる人間関係をコニュニティーに
- コミュニティーを広めることに重きを置きすぎるのではなく、本質に沿ってシンプルに
-
次の世代のことを考え、子どもを排除せずに行う。将来コミュニティーを作っていく存在として子どもに価値を置き、同時に親の心の負担をなくす
- 組織の役割分担を作ることで生まれる役としての繋がるよりは個人としての繋がりを重視する
- イベントや活動ではなく人で繋がるコミュニティーを
*最後に
たとえ現在の危機が取り越し苦労だとしても地域で共に暮らし、支え合う暮らしは新しい豊かさを作り出していくはず。
*感想
コミュニティー作りを試みている人、計画中の私たちにとって、実践に基づいた体験談、たくさんの事例をシェアいただき大きな学び、パワーをいただけた貴重な時間となりました。農業や建築といった専門的スキルがないからこそ人間関係に目を向けてソーシャルパーマカルチャーを展開してきたという淳さん、ともこさんは、仲間のことを楽しそうに紹介する笑顔の素敵なオープンマインドな方々でした。そんなコミュニティーに属するメンバーはきっと自分らしさを発揮しながら、自然を大切にできる方々だと思い、その存在に心が温まりました。
実践:卒業制作
卒業制作のグループごとの話し合いを持ち今後の展開をシェア
*ジオラマ
・自分の庭が実寸を把握しながらデザインできるようにするセット
・曼荼羅ガーデン、ロックスパイラルガーデン、樹木など100分の1のスケールで作成する
・廃材などを活用しお金をかけずに作成する
・箱も作って保管をできるようにする
・樹木の模型はリングで固定し、底にそれぞれの樹木の情報を掲載する
・太陽や雪も反映する?
*草木染め
・たくさんの染められる草木があるが、身近なとこにあるもので染めたい
・昔の服、着てない服を染めて、また使えるようにリバイタライズする
・希望者の服を有料で染める、材料費に当てる。(ガス、パネル)
・9月はテストで染める、展示用のパネルを作る、写真を撮って過程も展示する
・11月は展示、余力があれば染めの体験
美香さんより:お金、外の資源に頼るより、自分たちで調達できる材料、手段で行う。パーマカルチャーの要素を楽しみながら入れることに挑戦してほしい。
*映像
・方向性:フェスに来る方はパーマカルチャーのことを知ってるので、パーマカルチャーの紹介では物足りないのではないか
・ロードムービー的に参加者の家に行く
・オムニバス形式:パーなカルチャーを撮りに行く、7つの原則を提示する、能登、飛騨、東京の暮らし
・これまで撮りためた映像を使用するだけではなく、新たに撮影する。
・3人の個性を出す
*野草
・動機
自分の庭にあるもの、地域にあるもので元気になったらいい。自分で生活用品を作り、工業製品からの脱却。薬草パワーのセルフケアで病院いらず。環境破壊、動物虐待に貢献しない暮らし。シンプルな暮らしをしたい。ゴミを減らす。
・形式
目的別、症状別にインデックスを設ける
写真、押し花、材料、レシピの項目を切り紙に記入し、貼り合わせる一人最低2つの野草レシピ、またはナチュラルプロダクトに取り組む
・媒体
スタンドを廃材の木で作成し、立て掛けられるようにする
リングでも閉じて管理しやすくする
・展示
空き瓶に野草を飾る
一枚一枚をペグで吊るして展示する