Profile
信州・安曇野在住。昭和24年生まれ。大学卒業後1年間商社に勤めるが、自分の作ったものでないものを販売することと、都会の暮らしに疑問を持ち退社。かねてより好きだった山に入り、穂高町経営の山小屋の管理人として5年間過ごす。最初3500人の利用の山小屋が辞めるときは6500人の山小屋になる。町長よりも私に来る年賀状の方が多く、山で何をやっているんだと町長に呼ばれたこともあった。1977年、大天井岳の山小屋の管理人を辞め、北アルプス山麓の安曇野に自然共生型ヒュッテ建設を仲間と共に半セルフビルドでとりかかる。3年を経て1979年、完成した舎爐夢(シャロム)ヒュッテは、現在長野県内有数の稼働率を誇る人気の宿となる。自然農、シュタイナー教育、マクロビオティック、地域通貨、共同体、フェアートレード、パーマカルチャーなど、21世紀の循環型社会に必要なキーワードを包み込んだエコ・コミュニティーとして注目を浴びている。
信州北アルプスの山麓・安曇野に、舎爐夢(シャロム)ヒュッテがあります。唐松林を背に安曇野を見渡せる林の端にあり20名程収容できる白壁の建物で、ヨーロッパの山岳リゾートを思わせます。
宿の食事には、自然農・有機農法の畑で採れる野菜をお出ししています。近くには山や林もあり、春の摘み草の時期や秋には採りきれないほどの野草が手に入り、自然の有り難さに頭が下がります。宿を始めた動機は、少しでも自給自足に近い生活がしたかったからです。
豊富な物質生活は人間を決して幸せにはしません。社会が効率至上主義のもとに専業分業化していく中で、物があふれ人間性も失われ、人が歯車化されていく。私たちはその歪ひずみの中に生きているように思います。専業分業化の社会をつなぐものがお金であり、大変お金のかかる時代に私たちは生きています。本当はもっとシンプルに、もっと自由に、時間に縛られることなく豊かに暮らせたように思います。
自らが汗して食べ物を得、自然に還らないものは使わない、これを心掛けています。自然農を始めてずいぶん経ちますが、今も定期的に勉強会を続けています。そんな毎日から行き着いたところがパーマカルチャー的な持続可能な農的暮らしです。
以前から冬にレタスやトマトなどの夏野菜を食卓に供することに疑問を持っていたので、旬以外のものは使わないようにしました。
主食は無農薬玄米のマクロビオティック。朝食は国内産全粒粉の石窯で焼く天然酵母パン。そして、菜食メニューの石窯ピザもご好評をいただいています。舎爐夢(シャロム)ではピースフードを提唱しています。何よりも無駄のない、心地よい平和な暮らしでありたいと思っています。
料理のテーマはピースフード
自然の中で季節の恵みをそのままいただくことや、畑を耕して食物ができる喜びを感じることは、生きていく力そのものだと考えています。周辺で採れた旬の野菜を食べることは、体にとっても自然なことです。旬の野菜は季節に合わせて体を温めたり、冷やしたり、毒を外に出したりしてくれます。そして旬のものはほっとするおいしさがあるのです。お店に行けばいつでもどんなものでも手に入る時代です。土を感じない野菜、化学調味料と合成保存料が入った食品やお菓子など、不自然なものがたくさん並んでいます。
私たちが健康でいられるように、楽しく平和に暮らせる世界を思って毎日食事を作っています。「スローフード」という言葉がありますが、「ファーストフード」に対する「スローフード」でなく、それを乗り越えたいという思いで、私たちは、この料理を「ピースフード」と呼んでいます。このマクロビオティックを基本とした「ピースフード」が、皆さんの健康と平和な世界のために役立つことを願っています。
人間も自然も木も、草も虫もみんな仲間!
自然がテーマのエコ・コミュニティー
信州安曇野の雑木林に包まれた小さな宿、舎爐夢(シャロム)ヒュッテを中心に「自然」がテーマの共同体、シャロムコミュニティーが誕生したのは2001年3月下旬のことです。
20世紀は、経済の効率を最優先にした競争社会でしたが、21世紀は自分の利益を追求するより、自然と共にお互いを生かし支え合うパートナーシップが大切です。
1979年(昭和54年)に宿をオープンして以来「自然と融合した暮らし」を目標にしてきました。仲間と共に作った新しい共同体には、自然食のレストランやカフェ、自然食材を扱うショップ、フェアートレードの店やシュタイナーの木のおもちゃ、おすすめの本、八百屋、パン屋、情報コーナーがあります。ここを拠点に地域の活動(料理会や自然農の学習会、地域通貨の研究会など)が行われています。
また、2002年4月、宿に隣接する雑木林の中に園舎を持たない幼稚園「野外保育・森の子」を、お母さんたちの手で開園、現在は25人の子どもたちが野山を駆け回っています。
暮らしのベースは「耕さず、無肥料、無農薬で草や虫を敵にしない」自然農と草生栽培、パーマカルチャー、有機農を3反の田畑で行っています。
生産して加工消費するところまでをコミュニティーの中で実践。今まで効率化の中で失ったものに光を当てながら暮らしています。
また、解決しなければならないのはお金の問題です。縁を切ってしまうような現実から、再び縁を結ぶ地域通貨「安曇野ハートマネー」を導入。1999年12月に、会員約50名で開始。「安曇野ハートマネー」は通帳式から、財担保証券式、ピースユニオン(銀行)の設立と試行錯誤をしながらも、地域経済の底上げにつながる新たな展開を求めて成長、人の結びつきを強めています。
自然農、シュタイナー教育、マクロビオティック、地域通貨、共同体、フェアートレード、パーマカルチャーなど、21世紀の循環型社会に必要なキーワードを包み込んだエコ・コミュニティーとして発展しています。(臼井健二) |