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P92―93
いつか行きたい!
心やすらぐ
小さな宿
第39回
"ナチュラル"の本当の意味を教えてくれる!
北アルプスの自然にとけ込んだ"癒し"の小舎
舎爐夢ヒュッテ
北アルプスの山懐に抱かれた安曇野は、田んぼに畑、清らかに流れる川のせせらぎ……と、
自然と人がまだ仲良く暮らしていた時代の情景が残る場所。
今回ご紹介する「舎爐夢ヒュッテ」は、この豊かな土地で、ナチュラルなカントリーライフを実践しているオーガニックな宿。
訪れる人の心も体もよみがえらせる、その"癒し"の力をお伝えします。
取材/山本有紀 撮影/根岸佐千子 イラスト/山崎理恵
自然のなかで親しい人たちとのんびり過ごす時間がいかに人生を豊かにしてくれることか−−
山の仲間と共に3年という月日をかけて建てたハンドメイドハウスがそのことを静かに教えてくれます。
cap1 11×17
1白壁を飾るおしゃれな文字はヘブライ語は、オーナーの思いがこもった宿の名前を表している。
2花のたえないウインドウボックスが、本場アルプスの山小屋を彷佛とさせる。
3さりげなく置かれた耕具も、眼前に広がる山並をバックにすると素敵なオブジェに。
4子供も楽しく遊べる配慮がいっぱい。レストランの前には砂場も。
5部屋の窓が切り取る景色は、どんな絵画もかなわない自然の作った芸術作品。
Cap2 32×5
6アンティークのミシンが受け付けのカウンターに。
7ホールには、旅の思い出を綴るのにふさわしいデスクが。
8都会の喧騒を忘れさせる山小屋ふうの寝室。
9電線がこんなにキュートになるなんて。
10トイレには1人にひとつのミニタオル。
11フェアトレードの商品を扱った雑貨ショップを併設。
12宿の中心部には、宿泊客の交流をうながすホール。
本文 15×42
落葉松の林に囲まれた山道に入り、まるでトンネルのように緑が鬱蒼としげる山道を抜けると、北アルプスの山々の稜線をバックに、目指す宿が見えてきました。
地平線が見えるのではないかと思うような、宿の前に広がる開放感あふれる大地は、がたがたの山道を通り抜けてきた身にはまるで別世界。宿の名前である"シャロム"は、"平和"を意味するヘブライ語。安曇野の山と青空と白い雲に見事にマッチした白壁と木造の宿は、その名の通り、訪れた人の心に平穏をくれるオアシスのような場所でした。
オーナーの臼井健二さんは、最近注目の「スローライフ」な暮らしを、その昔から続けている自然人。大学卒業後、都会での1年のサラリーマン生活を経て、生まれ故郷の安曇野で、町営の山小屋の管理を経験。自然と生きることが、仲間とともに過ごす時間が、なにより大切なのだと教えてくれる時間だったのでしょう。山を降りる時には、"仲間と造る理想の宿"という夢を携えていました。
3年の月日をかけて、大工さんに手伝ってもらいながら、木の切り出しから、皮むき、製材、水道の配管まで、できることは自分達の手で行った、まさに手作りの宿。
訪れる人にも、"お客さま"としてより仲間としてくつろいでもらいたい、そんな素朴だけど温かなもてなしの気持ちが届くのでしょうか。吹き抜けの開放感あふれるホールには、泊まり客が自然と集まり、気づけば"仲間"としての一体感が生まれていました。
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「人も畑も60点でいい。がんばり過ぎはよくないよ」と語るオーナーは野菜づくりの名人。
無理せず育った野菜たちはもやさしい自然の味わい!
本文 15×45
宿の前に広がる大地には、シャロムのスタッフが丹精込めて育てている畑があります。朝の収穫に合わせて行われるオーナーによる畑案内では、子供にもどっていろいろな発見ができるはず。かぼちゃの花、巨大化したズッキーニ、白とピンクの可憐なそばの花、そして、なんといってもいちばんキュートだったのは、まだ花の名残りがあるきゅうりの赤ちゃん。花が咲いて、実がなって、種ができて……、当たり前のことなのに、周りにスーパーの野菜しかない生活をしていると、そんなことが新しい発見として胸に残るのです。
畑で採れた野菜は、レストランへ直行。「自然の味を感じてほしい」そんな思いから、化学調味料はいっさい使っていないシャロムの"食"は、旬の味をめいいっぱい楽しむことができます。
臼井さんの理想は"自然との共生"。シャロムにいると、衣食住のすべてで、自然の恵みをかんじることができます。レストラン前の屋根にあるルーフトップガーデンは、まるで臼井さんの理想を象徴しているよう。建物を建てたぶんだけ削ってしまった緑を、少しでも再生しようというやさしい気持ちから生まれました。奪うだけで
なく自らも生み出すこと、"ナチュラルな暮らし"の原点をここに見たような気がします。
朝ごはん時になると、宿のいろいろなところにトースターが設置されます。これは、宿で見つけたお気に入りの場所で、朝のひとときを過ごしてもらおうという、うれしい心配り。北アルプスの最高峰、常念岳を見ながらテラスでいただくパンの味は、体だけでなく、心をも確かに癒してくれました。
Cap1 14×12
1雨水をためる木の樽にいる金魚は、ボウフラの発生を抑える。
2自然とふれあう子育てを目指して、"自然が園舎"の幼稚園「森の子」が昨年春、ここにオープン。
34宿の敷地内の小道を散歩するだけで、小さな発見がいっぱいあるはず。
56薪の石釜で焼いた、自家製天然酵母、国内産小麦を使ったこだわりのパンやピザは絶品。レストラン
のランチでも味わえる。
オーガニック野菜で作った料理はミネラルたっぷり
Cap2 37×2
ランチは、玄米ごはんを中心に、おそうざい3品を合わせた玄米ランチセット(900円〜)と、石釜で焼いたナポリ風のビザ(650円〜)で、宿泊客以外も楽しめる。
Cap3 10×17
夜はレストラン棟で、宿泊客のみ、季節野菜のコースディナーが楽しめる。写真は夏のメニュー。
1つぶつぶとした食感が楽しい餅粟チャウダーと、小豆入り玄米ごはん。
2薬膳の効果もばっちりのソバの実のソーセージ。
3豆腐のキッシュパイと、宿の前で採れた野菜の味がぎっしりつまったグラタン。
4デザートはリンゴのケーキ。食後は、玄米コーヒーでほっと一息。
宿のあちらこちらで自然の恵みが育っています
Cap3 22×5
1レストラン前の屋根に作ったルーフトップガーデンは、断熱効果ばっちりで、テラスを涼しく保ってくれる。
2スタッフが朝採った野菜が、その日の糧となる。
3朝6時から、オーナーが案内してくれる畑で、大地の力を感じるのもいい。
DATA
データ 17×10
「舎爐夢ヒュッテ」長野県南安曇野穂高町豊里 ・0263-83-3838 部屋数9室(ドミトリー、キャンプスペースあ
り)。1泊2食付き9000円〜。チェックイン15〜18時、チェックアウト10時。車の場合、長野自動車道豊科I.C.
から約20分。電車の場合、JR中央線松本駅経由、大糸線穂高駅からタクシーで約10分。送迎あり(要予約)。
http://www.ultraman.gr.jp//shalom/
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