『自然と調和したこれからの
ライフスタイルを考える』
講師:デビッド・ホルムグレン氏
○パーマカルチャーとは
パーマカルチャーは持続可能な生活、そして持続可能な土地利用をデザインするための体系です。つまり、パーマカルチャーは自然と調和した暮らしのデザインであるといってもよいでしょう。もともとは、「パーマネント(永続的な)」と「アグリカルチャー(農業)」「カルチャー(文化)」をあわせて「パーマカルチャー」という造語が作られました。
パーマカルチャーは暮らし全体を扱うことから、対象となる分野は多岐にわたります。つまり、土地や自然を利用した農業、林業、建築といった分野から、教育や文化、健康、経済、地域社会のあり方にまで及びます。
また、パーマカルチャーは、持続可能な社会を作るために、現在のエネルギー消費の多い社会から、いかにエネルギー消費の少ない社会へと向かい、持続可能な社会を見つけていくか、という課題に対する取り組みであるといえます。
自然が持つ限界を見極め、自然の豊かさを暮らしに取り入れることを通じて、自然の中に自分たちの暮らしの場所をどのように取り戻していくかという意味で、パーマカルチャーは、自分がいる「今、ここから」始めることのできるものなのです。
○パーマカルチャーの歴史
パーマカルチャーは、タスマニア大学の教員だったビル・モリソンとその学生デビッド・ホルムグレンがともに作り上げた永続的なライフスタイルの枠組みです。世界的な歴史の流れの中で位置づけると、60年代後半から70年代にかけて盛り上がった環境への関心の高まりから生まれてきた運動のうちの一つであるといえます。
二人の共著で「パーマカルチャー1」が1978年に出版されて、パーマカルチャーの原理が始めて紹介されました。
その後、ビル・モリソンはパーマカルチャーを広めるための活動を精力的に行ったことにより、世界中に広まりました。
デビッド・ホルムグレンは、パーマカルチャーの具体的な事例を作るために、自然と人間が再び結びつくための技術を獲得しようと、30年の実践を積んできました。できるだけ物を持たない簡素な暮らしの中で、パーマカルチャーの要素である庭いじり(ガーデニング)や農業、建築の技術、森林に関する技術を学び、実践を積んできて、その成果をまとめた本を2002年に出版しています。この著書では、実践を踏まえて理論に立ち返り、理論の再提示を目指し、パーマカルチャーの12のデザイン論を論及しています。
○食べ物の自給
パーマカルチャーでは、自宅での野菜や果物を作ることを特に奨励しています。これは、庭で食べ物を作るということが、一番持続可能な農法であることによります。
自宅の庭で、新鮮な野菜や果物を育てることは、フードマイル(作られた場所から消費される場所までの距離)を短くすることになります。また、食べ終わったあとの食べかすもその場所で堆肥化することで、循環させることができます。地産地消(土地で作った物をその土地で消費する)を実践することが、余分なエネルギーの消費を抑えることにつながります。
食べ物を自宅で作ることのもう一つの意味は、庭いじりを通じて自然と再び関係を持つことができるということにあります。自然の中へ出かけて行き、それを見て楽しむだけではなく、自然と一緒になって暮らしていくことに大きな意味があります。
○多様性を大切にする
パーマカルチャーで重要な概念の一つに、生態系の多様性を保つということがあります。作る野菜も単一の作物ではなく、多様な作物を作ることを奨励しています。そして、パーマカルチャーでは、一年生の野菜よりも多年生の作物を利用することに重点を置いています。樹木の利用を推奨していることもパーマカルチャーの特徴です。樹木は、野菜に比べて土の中の栄養、水、日光を利用する力が優れています。
生態系の多様さの重要性という視点で考えると、将来の生産にとって一番大切なこととして、作物のタネの確保があげられます。現在、タネは大手の種苗会社の手に握られつつあります。こうしたことへの対抗策として、自分たちの手で種類を保存していこうという動きがあります。
パーマカルチャーでは、作物の中でも伝統的に何百年も栽培されてきた種を守ることを推奨しています。こうした種は、生産力も高く、耐病性もあるからです。今、こうした優れた品種が失われつつあります。
○地力を回復させることは食物生産の基礎
地力を保ち回復させるための方法としてパーマカルチャーがすすめるものには、堆肥場の利用や緑肥植物の栽培などがあります。
パーマカルチャーでは、こうした昔ながらの方法だけでなく、新しい方法も取り入れています。その一つはミミズを使って生ゴミを処理するミミズコンポストです。都市部での台所から出る生ゴミを処理する方法として世界で広く使われています。
また、新聞やダンボールを使ったシートマルチは、パーマカルチャーが盛んにすすめた方法です。新聞やダンボールを利用したシートマルチは、新しく菜園を作るときに有効な方法で、雑草が生えているところに使います。光をさえぎり、雑草を抑える効果があり、マルチとして使った新聞紙やダンボールは、時間とともに分解して土にかえっていきます。シートマルチは、ゴミとして捨てられる手元の資源をいかに有効に使うか、という一つのやり方です。パーマカルチャーでは、今ある資源を再利用することを考えるのです。
○動物を積極的に取り込んだシステム
・ニワトリを利用した例
動物を利用した方法としては、チキントラクター(ニワトリを使ったトラクター)があります。作物の収穫が終わったあとにニワトリを入れると、ニワトリはエサを探すために土をほじくり返し、畑をきれいにしてくれます。ただし、チキントラクターを行う際には、作物が育っている場所と収穫が終わっている場所を分けて作物を育てている畑にニワトリが入ってこないようにする必要があります。
日本では、動物を利用した方法にアイガモ農法があります。この方法は、アイガモが雑草を食べて米の生育を助けるだけでなく、アイガモも一緒に生育して、秋には米とアイガモの両方が収穫できる合理的なシステムだといえます。
・ブタを利用した例
ブタを竹林の中で放牧するやり方があります。タケノコをブタが食べることで、竹林が広がることを防ぎ、ブタも育ちます。また、土地のやせたオーストラリアでは、豚のフンが大切な肥料になるとともに、竹林内でブタを飼うことでブタの日焼けを防ぐ効果もあります。
竹林で放牧する際には、電柵を使います。パーマカルチャーでは、エネルギーのかからないローテクを推奨すると同時に、新しい技術を効果的に取り入れていくということも重要になります。
○燃料としての薪の利用
パーマカルチャーでは、人間に必要なものを取り上げるので、燃料の生産についても扱います。
オーストラリアでは、植林された林をパーマカルチャーのシステムに取り入れるのはあまり見られませんが、森林の利用というのはパーマカルチャーの取り組みの一番具体的な事例であるといえます。森林から得られた薪は、再生可能なエネルギー源として暮らしの中で利用することができます。
○建築材料としての土や石の利用
コンクリートは、作るのにも維持するのにもエネルギーを必要とします。そのため、コンクリートで物を作るということは、将来のメンテナンスが必要になるということを意味します。ですから、長い目で見るとコンクリートは非常に効率の悪い材料ということになります。建築や構造物には、コンクリートの代わりに石や、日干し煉瓦といった自然の材料を利用することができます。
石や日干し煉瓦は、熱をためる蓄熱体としての利用ができます。また、大きさを自由に調整することのできる日干し煉瓦は、耐加重性のある建築材料としても利用できます。
○化石燃料の使用
パーマカルチャーでは、伝統的な方法やエネルギーのかからない方法を奨励しています。その一方で、化石燃料のように使いきりの資源も、必要に応じて創造的に使うことをすすめていることが特徴として挙げられます。
○水の収穫と浄化
パーマカルチャーでは、水の収穫と使用した水の浄化処理ということも重要なポイントとなります。
屋根に降った雨をタンクにためて使うこと自体は、オーストラリアという乾燥した環境の伝統的に行われてきたアイディアです。
パーマカルチャーが、オーストラリアの乾燥した環境で作物を育てるのに雨水を利用するという話をすると、「そんなのずっと前からしていたじゃない」、ということになります。もともとは雨水を利用する伝統のある土地ですが、ここ30−40年の間にほとんどの人が水道の水を使って暮らすようになっています。そのため、オーストラリアの伝統的な手法が身近でなくなり、パーマカルチャーを通して人々が改めて見直している、という側面もあります。
オーストラリアで屋根の水を集めるということは新しいアイディアではありませんが、使用した水をヨシなどの植物を使って浄化するというのは新しいアイディアです。
※日本では、台所からの排水をためて鯉を飼ったり、レンコンを作ったりしていました。こうした手法は、使った水をきれいにするための伝統的な手法であるといえます。
○パーマカルチャーを適用する範囲
出発点はパーマカルチャーの倫理とデザインの原則。
パーマカルチャーが適用されている領域
・土地と自然の利用:農業・林業など
・人工環境:建築など
・道具と技術
これからパーマカルチャーが適用されるべき領域
・文化・教育:持続可能な社会のための教育など
・健康と精神的な健全性:部分ではなく身体全体をとらえるホリスティックな考え方
・経済・金融システム:小規模な地域に根ざした経済活動(地域通貨など)
・土地所有・地域社会のあり方:土地の利用法を含むコミュニティの運営
パーマカルチャーは、以上7つの領域をつむぐものです。出発点はいつも自分自身、どんな変化も自分の中から起こります。自分から出発して家族、隣人、近隣社会というように、外へ外へと拡がっていきます。こうしたデザインを通じて、より良い持続可能な社会を見つけていくことがパーマカルチャーの目的です。
この資料は、2004.6.6に開催された NPO法人パーマカルチャー・センタ・ジャパン設立記念 デビッド・ホルムグレン氏講演をもとに、ホールアース自然学校が作成した。
6月15日
デビット ホルグレンと共に国際自然農法センターを訪れました。
圃場は麦 草 作物と植えられ 互いの関連性で共生関係を生み生育しています。造林ガマを手にするデビット
中河原さんにご案内戴きました。しっかり生態系が保たれみみずの多い圃場でした。
作物をそのままにして生育させる自然生えの圃場
トマト キュウリ ナスやスイカなどをそのまま埋めて翌年自然に発芽させる。芽は時期になったら沢山生え競合して強いものだけが残る 周りの草を刈るだけで一切手を加えないで生育させる 種採りや蒔くという行為もしない まさに福岡さんが提唱する無為自然 2から3年すれば適材に野菜が生育する圃場が出現する。
造林ガマを手にしたデイビットは鍛冶屋の中澤さんの所を訪ね造林ガマを購入 オーストラリアへのお土産にしていました。
夜にはデイビットの歓迎会 お寿司パーティー
NPO地域づくり工房の傘木さんも来られて食後には大町の水路発電の取り組みやバイオエネルギー 菜の花プロジェクトの取り組みを紹介して戴きました。http://npo.omachi.org/
その後デイビットがオーストラリアでの取り組みを紹介 12時過ぎまで交流会が続きました。 |